食材から辿る / 新大陸(コロンブス交換)

唐辛子 素材 時期 C検証済

成立年代 -4000〜

唐辛子が、いつ・どこで食べ物として成立し、各地へどう伝わったかをまとめています。 原産地での成立を3ゲート(食材入手・調理技術・場)で示し、その後の各地への到来を記録でたどります。

メソアメリカ〜南米で古くから複数の Capsicum 種を栽培化。考古植物学(デンプン粒微化石)は約6000年前(およそ前4000年)のアメリカ大陸各地での唐辛子利用を示す。原産地食用成立は前コロンブス期・年代に幅

3ゲート

食材入手ゲート
栽培化(メソアメリカ〜南米で複数系統を栽培化)=およそ前4000年ごろ(考古植物学は約6000年前の利用を示す)
調理技術ゲート
生・乾燥・粉砕して辛味料に。原産地で在来の自明な用法
場ゲート
食材入手と同年(原産地アメリカ大陸での食用は栽培化=入手と同時に成立。場ゲートは退化)。※旧大陸へはコロンブス以後の物理到来が先行し場ゲートに数えない

唐辛子はどこから広がったか

唐辛子(トウガラシ属 Capsicum)は南北アメリカの原産で、メソアメリカから南米にかけて古くから栽培化されていた。旧大陸に出たのはコロンブスの航海以後で、その広がりの速さは新大陸由来の作物のなかでも際立っている。

二つの海の道

スペインには15世紀末、コロンブスが持ち帰り、エストレマドゥーラの修道院などで栽培が始まった。だが唐辛子を地球規模で運んだ主役はポルトガルの海洋交易路だった。ゴア(1510年陥落)からマラッカ(1511年占領)を結ぶ航路に乗って、16世紀前半にはもう東南アジアの島々——インドネシアやマレー半島——に達している(1520年ごろ)。従来この地の辛味はジャワ長胡椒などが担っていたが、以後は新大陸の唐辛子がその役割に加わった。同じ経路でスリランカ(1505年上陸)、タイやラオス(16世紀半ば)へも広がり、外来の辛味として現地の名を得ていく。スリランカでは「ラタ・ミリス(外来の唐辛子)」と呼ばれ、やがて既定の辛味そのものになった。

インド・アフリカ・東アジアへ

インド亜大陸ではポルトガル領ゴアやコチンを起点に16世紀半ばに沿岸へ入り、北インドの内陸へはやや遅れて18世紀、マラーター勢力が陸路で持ち込み、1719年のデリー攻撃の記録に現れる。アフリカへはポルトガル人が16世紀に大西洋岸(ギニア・アンゴラなど)へ持ち込み、奴隷交易の路をたどって内陸へ急速に広がった。モザンビークなど東岸にも同じ世紀のうちに達し、エチオピア高原には16〜18世紀のあいだに入っている。

東アジアへの到来は少し遅い。中国の文献に唐辛子が現れるのは1591年で、四川の料理に深く根づくのは18世紀(1749年ごろまで)とされる。この受容の道筋はブライアン・ドットの研究が跡づけている。朝鮮半島には16世紀末から17世紀初頭に伝わり、やがて発酵漬物の赤い色と辛さを担うようになった。地中海の東岸では、スペイン経由とオスマン帝国経由の二つの流れが16世紀に交わり、バルカンや中東へ辛味を届けている。コロンブスの航海から一世紀ほどのあいだに、唐辛子は文字どおり世界を一周したことになる。

各地への伝来 29

各地で食べ物として定着した時期の記録です。地域によっては、それに先立つ物理的な到来(観賞用など、食用より前の前史)が含まれることがあります。

  • 前6500〜前6000頃 メソアメリカ 在来在地栽培
  • 前3000〜前1800頃 ペルー太平洋岸 在来
  • 前2500頃 ペルー 在地栽培在地栽培
  • 1493〜1500頃 スペイン 新大陸交換流通
  • 1500〜1600頃 サブサハラ・アフリカ 植民地交易
  • 1500〜1600頃 モザンビーク 植民地交易
  • 1505〜1600頃 スリランカ 新大陸交換
  • 1510〜1600頃 ゴア 植民地交易
  • 1510〜1719頃 北インド 植民地交易
  • 1510〜1600頃 南アジア 植民地交易
  • 1511〜1540頃 インドネシア 新大陸交換
  • 1511〜1540頃 シンガポール 新大陸交換
  • 1511〜1600頃 タイ 新大陸交換
  • 1511〜1540頃 マレーシア 新大陸交換
  • 1511〜1600頃 ミャンマー 新大陸交換
  • 1511〜1600頃 ラオス 新大陸交換
  • 1520〜1770頃 エチオピア高原 新大陸交換
  • 1526〜1600頃 イタリア 新大陸交換
  • 1530〜1650頃 南インド 植民地交易
  • 1535〜1600頃 チュニジア 新大陸交換
  • 1535〜1600頃 マグリブ 新大陸交換
  • 1540〜1650頃 アナトリア 新大陸交換(オスマン経由)
  • 1540〜1650頃 レバント 新大陸交換(オスマン経由)
  • 1565〜1600頃 フィリピン 新大陸交換
  • 1570〜1591頃 中国 新大陸交換
  • 1590〜1614頃 韓国 新大陸交換
  • 1684〜1749頃 四川 新大陸交換
  • 1804〜1900頃 フィジー 植民地交易流通
  • 1840〜1910頃 コロラド 新大陸交換

唐辛子の到来が成立を縛った料理 56

唐辛子が届く前には成り立たなかった料理です。到来年が、その料理の物理的な下限になります。

唐辛子を使う料理 47

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