食材から辿る / 旧大陸

素材 時期 B検証済

成立年代 -6000〜

米が、いつ・どこで食べ物として成立し、各地へどう伝わったかをまとめています。 原産地での成立を3ゲート(食材入手・調理技術・場)で示し、その後の各地への到来を記録でたどります。

アジアイネ(Oryza sativa)の栽培化=華南・長江下流域で前6000年ごろ。栽培化=食材入手で食用自明

3ゲート

食材入手ゲート
栽培化(アジアイネ Oryza sativa)=華南・長江下流 前6000年ごろ(脱粒性低下で確認)
調理技術ゲート
炊飯・蒸し等の加熱(在来知)
場ゲート
栽培地での主食化。食材入手(栽培化)と同年

米はどこから広がったか

米(イネ)は、たがいに独立した二つの栽培化の歴史をもつ作物である。ひとつはアジアのイネ(Oryza sativa)で、中国の長江下流域、いまの華南一帯でおよそ紀元前6000年ごろ、野生のイネから育てられ始めた。脱粒しにくい——つまり栽培に適した——穂の特徴が、この地の遺跡から出土した古い米に現れることが、その栽培化を裏づけている。もうひとつは西アフリカのイネ(Oryza glaberrima)で、これはアジアのイネとは別の種であり、ニジェール川の内陸デルタから上流域にかけて、およそ2000〜3000年前に野生種の O. barthii から独立に栽培化された。マリのジェンネ・ジェノ遺跡などにその古い痕跡が残る(リナレスの2002年の研究)。米は一か所で生まれて広がったのではなく、大陸をまたいで二度、別々に畑の作物になったのである。

アジアのイネ、東へ南へ

アジアのイネは、栽培化ののち周辺へ広がっていった。東南アジアへは紀元前2000年ごろ、インダス文明の集落を含む南アジアへは紀元前1800年ごろ、ミャンマーやスリランカへも紀元前の各世紀に達している。北東アジアでは、朝鮮半島に青銅器時代(紀元前1100年ごろ、中国東北部の遼東地方から)稲作が入り、日本列島へは紀元前900年ごろ伝わった。放射性炭素年代の研究によれば、北部九州で紀元前930年ごろに灌漑水田が現れており、長江デルタから大陸を経て伝わったこの稲作が、のちの弥生時代の水稲耕作となる。西アジア方面では、イランに紀元前300年ごろ、中央アジアのブハラ周辺に3世紀ごろ、米が現れている。

イスラームとともに地中海へ

米が地中海世界へ本格的に入るのは、7世紀以降のイスラーム勢力の拡大とともにだった。エジプトにはアラブによる征服(641年)ののち、レヴァントやイエメン、アラビア半島南部へも9〜10世紀に稲作が伝わった。インド洋の交易網に乗って、アジアのイネは東アフリカのスワヒリ海岸にも6〜8世紀に達している。イベリア半島とシチリアには、ムーア人・アラブの支配下の8〜9世紀に、灌漑技術とともに米がもたらされた。ヨーロッパの内陸ではさらに遅く、オスマン帝国下のアナトリアで14世紀、北イタリアのポー平原で稲作が始まるのは15世紀後半のことである(1475年、スフォルツァ家が米の種を贈ったという記録が残る)。

新大陸と大西洋世界

大航海時代に入ると、アジアのイネは新大陸へも渡った。スペイン人が16世紀前半(1520年代)にメキシコのベラクルス方面へ持ち込み、18世紀には北米のルイジアナでも栽培が始まる。ルイジアナの稲作には、西アフリカから連れてこられた人々がもつ稲作の知識が深くかかわっていた。二つの大陸で別々に生まれた米は、こうして大西洋の岸辺で交わることになった。

各地への伝来 42

各地で食べ物として定着した時期の記録です。地域によっては、それに先立つ物理的な到来(観賞用など、食用より前の前史)が含まれることがあります。

  • 前8000〜前6000頃 華南 在来在地栽培
  • 前2000〜前1000頃 ミャンマー 在来
  • 前2000頃 東南アジア 在来在地栽培
  • 前1800〜前1600頃 ベンガル 在来在地栽培
  • 前1800頃 南アジア 在来在地栽培
  • 前1500〜前1400頃 フィリピン 在来
  • 前1300〜前900頃 朝鮮半島 交易路
  • 前1000〜100頃 イラン 交易路在地栽培
  • 前1000〜前800頃 日本 交易路
  • 前1000〜前300頃 西アフリカ 在来
  • 前900〜250頃 イラク 交易路
  • 前900〜前161頃 スリランカ 在来在地栽培
  • 200〜500頃 中央アジア 交易路在地栽培
  • 600〜1000頃 イエメン 交易路
  • 600〜1200頃 東アフリカ 交易路
  • 641〜1000頃 エジプト 交易路在地栽培
  • 700〜1000頃 レバント 交易路
  • 711〜950頃 スペイン 交易路
  • 711〜1250頃 ポルトガル 交易路
  • 800〜1521頃 グアム 在来在地栽培
  • 800〜1500頃 サウジアラビア 交易路
  • 800〜1500頃 湾岸地域 交易路流通
  • 827〜1050頃 シチリア 交易路
  • 1250〜1390頃 英国 交易路流通
  • 1300〜1450頃 アナトリア 交易路在地栽培
  • 1300〜1500頃 デンマーク 交易路流通
  • 1417〜1600頃 バルカン半島 交易路
  • 1450〜1500頃 ロンバルディア 交易路
  • 1450〜1561頃 ヴェネト 交易路在地栽培
  • 1500〜1800頃 コーカサス 交易路
  • 1500〜1550頃 ドミニカ共和国 植民地交易
  • 1500〜1750頃 ブラジル 植民地交易
  • 1500〜1600頃 プエルトリコ 植民地交易
  • 1520〜1600頃 キューバ 植民地交易流通
  • 1532〜1700頃 ペルー 植民地交易
  • 1532〜1600頃 ペルー太平洋岸 植民地交易
  • 1600〜1700頃 フィンランド 交易路流通
  • 1612〜1750頃 コスタリカ 植民地交易在地栽培
  • 1612〜1629頃 中米 植民地交易在地栽培
  • 1652〜1700頃 南アフリカ 植民地交易流通
  • 1718〜1750頃 ルイジアナ 植民地交易
  • 1847〜1860頃 ベリーズ 植民地交易在地栽培

米の到来が成立を縛った料理 68

米が届く前には成り立たなかった料理です。到来年が、その料理の物理的な下限になります。

米を使う料理 60

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