ハヤシライス 時期 B起源説 B検証済
確度は2軸: 時期=成立時期の固さ/起源説=発祥譚(説)の固さ(A〜Dの4段階・別々に持つ)。確度とは?→
暴かれた通説あり出典で反証された通説を抱える料理です(真の起源は未確定のことが多い)。
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史料が示すこと 起源・発祥は?
俗説「丸善の創業者 早矢仕有的(1837-1901)が、訪ねてきた友人に有り合わせの肉と野菜のごった煮に飯を添えて振る舞ったのが起こりで、その名が料理…」は、史料の検証で退けられている。
ハヤシは英語 hash/hashed(細かく刻む・刻んだ肉)の転写で、人名ではない。(1) 日本での初出は1888年(明治21)『軽便西洋料理法指南』の「ハヤシビフ」で、ロースビフ(冷えたローストビーフ)を薄く切り玉葱と牛酪で炒め、ソップを沢山とスチウのソースを少し入れて煮、揚げたパンを載せて出す=英国の hashed beef そのもののレシピ。同書はメンチビフ・ビフステーキ・ロースビフと英語料理名の転写が並ぶ西洋料理教本で、ハヤシビフもその系列にある。(2) その英国側の原型は18-19世紀の cold meat cookery で、1747年 Hannah Glasse に「Hash Beef the same Way」、1861年 Beeton にレシピ628「HASHED BEEF (Cold Meat Cookery)」(冷えたローストビーフの薄切り+玉葱+小麦粉でとろみを付けた褐色のグレービー)がある。1888年の日本語レシピが揚げパンを添えるのは、Glasse の hash が sippets(揚げ・焼きパン)を皿に並べるのと同じ作法。(3) ハヤシが一般名詞だった証拠として、1902年『新訳英和辞典』と1912年『実用和英商業辞典』がともに minced meat の訳語に「ハヤシ肉」を当てる。1898年『和清西洋料理法自在』の「ドライハヤシ」は英語 dry hash の転写で、人名では説明できない。(4) 同時代の外来語辞典が語源を名指しする。1932年『外来新語辞典』は「ハイシライス〔名〕hash and rice(英)」、1935年『万国新語大辞典』は「ハツシ(Hash)…ハイシライス及びハイシビーフ等がある」「ハイシライス ハヤシライスと同じ」と記し、ハヤシ/ハイシ/ハツシが同一語の異表記であることを明示する。(5) 言語学者 楳垣実『日本外来語の研究』(1943)は、英語 Hashed の転写に和語「はやす(細かく切る)」との意味的類推が重なったとする。飯にかける形は1913年『食道楽』冬の巻に「牛肉のハイシ」と「牛肉のハイシライス」が別項で並ぶのが確認できる最古級で、煮込み本体と飯にかけた形が同じ料理の供し方の違いとして扱われていた。褐色ソースは初出時点から用いられており、日本ではのちにドミグラスソースとして濃厚化した。 なお「早矢仕有的(丸善創業者)の名に由来するという説」という通説は一次史料・学術文献で退けられている。
3ゲート
- 食材入手ゲート
- 牛肉(明治の肉食解禁1872年)。玉葱は1880年頃から流通、小麦粉・牛酪も明治の洋食化とともに入手可
- 調理技術ゲート
- 西洋料理の褐色ソース(小麦粉と油脂のルー)技法の移入。のちドミグラスソースとして濃厚化
- 場ゲート
- 西洋料理教本と洋食店を通じて都市大衆へ。1913年には飯にかける形が家庭向け料理書に載る
成立年代と成立ゲート
食材入手と調理技術の各ゲートを同じ時間軸に並べた(流通は独立ゲートでなく食材入手の経路として内包し、場ゲートは年に乗らない構造ゲートなので図には出さない)。最も遅い食材入手ゲート(1872年・在地/到来・牛肉)が律速=成立の物理的な下限で、太線で示す。それより早い要因はその時点で既に充足していた(細線)。成立年代の帯は律速以降にある。
- 食材入手(流通/在地/加工の経路を内包)
- 調理技術
- 太線=律速(最も遅い=成立を縛る)
- 細線=既に充足
- 場ゲートは年に乗らない構造ゲート(図外)
検証メモ: 細切りの牛肉と玉葱を褐色のソースで煮込み、飯にかけた和製洋食。名前のハヤシは人名ではなく、英語の hash/hashed(細かく刻む・刻んだ肉)の写しである。明治期の日本語では「ハヤシ肉」が minced meat の訳語として英和辞典に載り(1902年『新訳英和辞典』、1912年『実用和英商業辞典』)、料理書には英語 dry hash の写しである「ドライハヤシ」が並んでいた(1898年『和清西洋料理法自在』)。日本での初出は1888年(明治21)の西洋料理教本『軽便西洋料理法指南』の「ハヤシビフ」で、冷えたローストビーフを薄く切って玉葱と牛酪で炒め、ソップとスチウのソースで煮て、揚げたパンを載せて出す。これは18世紀以来の英国の残り肉料理そのもので、1747年のハナ・グラスに「ビーフも同じやり方でハッシュにせよ」とあり、1861年のビートン夫人には冷肉料理としての「ハッシュト・ビーフ」の一項がある。グラスが揚げ・焼きパンを皿に並べるのと、1888年の日本語レシピが揚げパンを載せるのは同じ作法である。飯にかける形は1913年『食道楽』冬の巻に現れ、そこでは煮込み本体の「牛肉のハイシ」と飯にかけた「牛肉のハイシライス」が別々の項として並ぶ。日本では褐色ソースがのちにドミグラスソースとして濃厚化し、現在ハッシュドビーフと呼ばれるものは同じ料理の別表記である(1935年『万国新語大辞典』は「ハイシライス ハヤシライスと同じ」と記す)。丸善創業者 早矢仕有的の名に由来するという説と、上野精養軒のコック林の賄いに由来するという説は、いずれも同時代の裏づけを欠く後付けの人名語源譚。似た見た目のビーフストロガノフとは系統が別で、ハヤシの側は18世紀英国の残り肉料理から、ストロガノフの側は19世紀ロシアのサワークリーム煮込みから来ており、両者を結ぶ史料は無い。
起源説
定説
英語 hash(hashed beef)の転訛 — 明治の西洋料理受容で入った英国式「残り肉の煮直し」が飯にかかって和製洋食になった B
ハヤシは英語 hash/hashed(細かく刻む・刻んだ肉)の転写で、人名ではない。(1) 日本での初出は1888年(明治21)『軽便西洋料理法指南』の「ハヤシビフ」で、ロースビフ(冷えたローストビーフ)を薄く切り玉葱と牛酪で炒め、ソップを沢山とスチウのソース…続きを読む
ハヤシは英語 hash/hashed(細かく刻む・刻んだ肉)の転写で、人名ではない。(1) 日本での初出は1888年(明治21)『軽便西洋料理法指南』の「ハヤシビフ」で、ロースビフ(冷えたローストビーフ)を薄く切り玉葱と牛酪で炒め、ソップを沢山とスチウのソースを少し入れて煮、揚げたパンを載せて出す=英国の hashed beef そのもののレシピ。同書はメンチビフ・ビフステーキ・ロースビフと英語料理名の転写が並ぶ西洋料理教本で、ハヤシビフもその系列にある。(2) その英国側の原型は18-19世紀の cold meat cookery で、1747年 Hannah Glasse に「Hash Beef the same Way」、1861年 Beeton にレシピ628「HASHED BEEF (Cold Meat Cookery)」(冷えたローストビーフの薄切り+玉葱+小麦粉でとろみを付けた褐色のグレービー)がある。1888年の日本語レシピが揚げパンを添えるのは、Glasse の hash が sippets(揚げ・焼きパン)を皿に並べるのと同じ作法。(3) ハヤシが一般名詞だった証拠として、1902年『新訳英和辞典』と1912年『実用和英商業辞典』がともに minced meat の訳語に「ハヤシ肉」を当てる。1898年『和清西洋料理法自在』の「ドライハヤシ」は英語 dry hash の転写で、人名では説明できない。(4) 同時代の外来語辞典が語源を名指しする。1932年『外来新語辞典』は「ハイシライス〔名〕hash and rice(英)」、1935年『万国新語大辞典』は「ハツシ(Hash)…ハイシライス及びハイシビーフ等がある」「ハイシライス ハヤシライスと同じ」と記し、ハヤシ/ハイシ/ハツシが同一語の異表記であることを明示する。(5) 言語学者 楳垣実『日本外来語の研究』(1943)は、英語 Hashed の転写に和語「はやす(細かく切る)」との意味的類推が重なったとする。飯にかける形は1913年『食道楽』冬の巻に「牛肉のハイシ」と「牛肉のハイシライス」が別項で並ぶのが確認できる最古級で、煮込み本体と飯にかけた形が同じ料理の供し方の違いとして扱われていた。褐色ソースは初出時点から用いられており、日本ではのちにドミグラスソースとして濃厚化した。
- 支持 軽便西洋料理法指南 : 実地応用 一名・西洋料理早学び(マダーム・ブラン述/洋食庖人編、久野木信善、1888年=明治21)26-27頁「ハヤシビフ」— ロースビフを薄く切り玉葱と牛酪で煎り付け、ソップを沢山入れスチウのソースを少し加えて煮、揚げたパンを載せて出す(=英国式 hashed beef の転写。飯は用いない)。NDLデジタルコレクション原本スキャン 重み5
- 支持 新訳英和辞典(神田乃武ほか編、三省堂、1902年=明治35)— 見出し minced meat の訳語に「剉砕肉 ハヤシ肉」を当てる。明治期の日本語で「ハヤシ(肉)」が人名と無関係な一般名詞=細かく刻んだ肉を指す語として辞書に載っていたことを示す。NDLデジタルコレクション 重み5
- 支持 実用和英商業辞典(1912年=大正元)— 商品語彙表の Meat の項に「minced meat ハヤシ肉」。1902年『新訳英和辞典』と独立に、ハヤシ肉=minced/hashed meat の対訳が定着していたことを示す。NDLデジタルコレクション 重み5
- 支持 外来新語辞典(1932年=昭和7)— 「ハイシライス〔名〕hash and rice(英)飯ニキザミ肉ヲカケタ西洋料理。」同時代の外来語辞典が語源を英語 hash と明記する。NDLデジタルコレクション 重み5
- 支持 万国新語大辞典(1935年=昭和10)— 「ハツシ(Hash)肉やキヤベツ等をこま切りにして煮た料理でハイシライス及びハイシビーフ等がある。」「ハイシライス ハヤシライスと同じ。」ハツシ/ハイシ/ハヤシが同一語(Hash)の異表記であることを同時代の辞典が明記する。NDLデジタルコレクション 重み5
- 支持 食道楽(村井弦斎、報知社、1913年=大正2)冬の巻244頁 — 目次に「牛肉のハイシ」と「牛肉のハイシライス」が別項で並ぶ。煮込み本体(ハイシ)と飯にかけた形(ハイシライス)が同一料理の供し方の違いとして併記された、飯にかける形の確認できる最古級の記載。NDLデジタルコレクション 重み5
- 支持 和清西洋料理法自在(1898年=明治31)— 「ドライハヤシ」の項。英語 dry hash の転写で、人名では説明できない「ハヤシ=hash」の用法を示す明治期の料理書。NDLデジタルコレクション 重み5
- 支持 軍隊料理法(1910年=明治43)— 「ハツシビーフ」の項。ハヤシ/ハイシ/ハツシの表記ゆれが明治末に併存していたことを示す。NDLデジタルコレクション 重み5
- 支持 Isabella Beeton, The Book of Household Management (London: S.O. Beeton, 1861 合本初版) 印刷頁292 レシピ628「HASHED BEEF (Cold Meat Cookery)」— 材料は肉から取っておいたグレービー、トマトソース小さじ1、ハーヴェイソース小さじ1、良いマッシュルームケチャップ小さじ1、ポートまたは強いエール、胡椒と塩、とろみ用の小麦粉少々、みじん切りの玉葱1個、冷えたローストビーフの薄切り数枚。肉以外を煮て脂を掬い、粉をまぶした薄切り肉を入れて沸かさずに温め、sippets of toasted bread(焼いたパン)を添える。続く293頁のレシピ629はロースト骨から出汁を取る第二法。同書は Cold Meat Cookery を家政書の一分類として立てた。19世紀英国の残り肉料理としての hashed beef の一次史料 重み5
- 支持 Hannah Glasse, The Art of Cookery Made Plain and Easy (London, 1747 初版) 59頁(第4章)「To Hash Mutton like Venison」— 冷肉を極薄に刻み、骨で取った出汁を漉し、グレービー1/4パイントに赤葡萄酒大匙一杯・みじん玉葱・レモンの皮・粉をまぶしたバターを加えて温め直す。項の末尾に「Hash Beef the same Way.」とあり、牛肉のハッシュを同じ作り方で示す。直前の「To Hash Cold Mutton」は、薄いパンを狐色に焼いて三角に切ったものを皿に並べ、その上にハッシュを注ぐ(sippets)と指示する。英語圏 hashed beef の18世紀一次史料 重み5
- 支持 楳垣実『日本外来語の研究』(1943年)— 言語学者による外来語研究。英語 Hashed が「ハツシ/ハイシ」と写され、和語「はやす(細かく切る)」との意味的類推が重なって「はやし肉」「ハヤシライス」になったと論じる。国立国会図書館サーチ書誌 重み4
- 言及 ハヤシライス — Wikipedia(日本語)語源3説(早矢仕有的説/上野精養軒の林コック説/hashed beef説)と文献初出の整理。脚注の原典へ辿る索引として使用 重み1
- 言及 ハッシュドビーフ — Wikipedia(日本語)薄く細切りにした牛肉をドミグラスソースやトマトソースで煮込んだ洋食。英国では元来ドミグラスソースで煮込まず、日本へ伝わってから変化したと推察されるとする。1888年『軽便西洋料理法指南』の「ハヤシビフ」を日本での初出とする 重み1
反証
早矢仕有的(丸善創業者)の名に由来するという説 D
丸善の創業者 早矢仕有的(1837-1901)が、訪ねてきた友人に有り合わせの肉と野菜のごった煮に飯を添えて振る舞ったのが起こりで、その名が料理名になったとする説。流布の出所は丸善の社史『丸善百年史』(1980)で、そこでも「幕末か明治の初年のことであろう」と…続きを読む
丸善の創業者 早矢仕有的(1837-1901)が、訪ねてきた友人に有り合わせの肉と野菜のごった煮に飯を添えて振る舞ったのが起こりで、その名が料理名になったとする説。流布の出所は丸善の社史『丸善百年史』(1980)で、そこでも「幕末か明治の初年のことであろう」という推定形で書かれ、同時代の一次史料は挙がっていない。岐阜県図書館が2005年に行ったレファレンス調査でも、早矢仕有的関係資料・明治期の洋食資料を当たってレシピを載せた資料は見つかっていない。語源としては成り立たない。1902年『新訳英和辞典』と1912年『実用和英商業辞典』が minced meat の訳語に「ハヤシ肉」を当て、1898年の料理書に英語 dry hash の転写「ドライハヤシ」があるとおり、ハヤシは明治期に人名と無関係な一般名詞として日本語に入っていた。1932年『外来新語辞典』・1935年『万国新語大辞典』も語源を英語 hash と記す。家名から逆算された後付けの帰属で、一料理名の由来としては退けられる。ただし早矢仕本人が洋食のごった煮に飯を添えて客に出していたという伝承そのものを否定する史料があるわけではなく、否定されるのは名前の由来としての主張である。
- 反証 新訳英和辞典(神田乃武ほか編、三省堂、1902年=明治35)— 見出し minced meat の訳語に「剉砕肉 ハヤシ肉」を当てる。明治期の日本語で「ハヤシ(肉)」が人名と無関係な一般名詞=細かく刻んだ肉を指す語として辞書に載っていたことを示す。NDLデジタルコレクション 重み5
- 反証 実用和英商業辞典(1912年=大正元)— 商品語彙表の Meat の項に「minced meat ハヤシ肉」。1902年『新訳英和辞典』と独立に、ハヤシ肉=minced/hashed meat の対訳が定着していたことを示す。NDLデジタルコレクション 重み5
- 反証 外来新語辞典(1932年=昭和7)— 「ハイシライス〔名〕hash and rice(英)飯ニキザミ肉ヲカケタ西洋料理。」同時代の外来語辞典が語源を英語 hash と明記する。NDLデジタルコレクション 重み5
- 反証 万国新語大辞典(1935年=昭和10)— 「ハツシ(Hash)肉やキヤベツ等をこま切りにして煮た料理でハイシライス及びハイシビーフ等がある。」「ハイシライス ハヤシライスと同じ。」ハツシ/ハイシ/ハヤシが同一語(Hash)の異表記であることを同時代の辞典が明記する。NDLデジタルコレクション 重み5
- 反証 和清西洋料理法自在(1898年=明治31)— 「ドライハヤシ」の項。英語 dry hash の転写で、人名では説明できない「ハヤシ=hash」の用法を示す明治期の料理書。NDLデジタルコレクション 重み5
- 反証 楳垣実『日本外来語の研究』(1943年)— 言語学者による外来語研究。英語 Hashed が「ハツシ/ハイシ」と写され、和語「はやす(細かく切る)」との意味的類推が重なって「はやし肉」「ハヤシライス」になったと論じる。国立国会図書館サーチ書誌 重み4
- 反証 レファレンス協同データベース(国立国会図書館)事例1000022559「早矢仕有的がつくったハヤシライスのレシピが載った本はないか。」(岐阜県図書館、2005年)— 早矢仕有的および丸善関係資料・明治期洋食資料を調査したがレシピを載せた資料は見つからず(未解決)。『丸善百年史』には早矢仕有的がハヤシライスの創始者とされた経緯は記されるがレシピは無い、と回答プロセスに明記 重み3
- 言及 丸善ジュンク堂書店コーポレートサイト「9月8日はハヤシの日」— 丸善創業者 早矢仕有的の誕生日を記念日とし、『丸善百年史』(丸善、1980)の一節「幕末か明治の初年のことであろう。友人が訪問すると、有的は有り合わせの肉類や野菜類をゴッタ煮にして、メシを添えて饗応するのが常であった。そこから人々はこの料理をハヤシライスといい…」を引く。早矢仕説の流布の出所 重み2
- 言及 ハヤシライス — Wikipedia(日本語)語源3説(早矢仕有的説/上野精養軒の林コック説/hashed beef説)と文献初出の整理。脚注の原典へ辿る索引として使用 重み1
上野精養軒のコック「林」の賄いに由来するという説 D
明治初期創業の上野精養軒に勤めていた林というコックが、牛肉の切れ端と余り野菜をドミグラスソースで煮て飯にかけた従業員の賄いを作り、その名で店の品書きに載ったとする説。林なる人物の実在を示す同時代史料も、店側の同時代記録も確認されていない。早矢仕説と同型の人名語源譚で、独立した裏づけを欠く。語源としては1888年の料理書「ハヤシビフ」、1898年「ドライハヤシ」、1902年・1912年の英和辞典の「ハヤシ肉=minced meat」、1932年・1935年の外来語辞典の hash 由来の記述が一貫して英語 hash を指しており、人名説は成り立たない。
- 反証 軽便西洋料理法指南 : 実地応用 一名・西洋料理早学び(マダーム・ブラン述/洋食庖人編、久野木信善、1888年=明治21)26-27頁「ハヤシビフ」— ロースビフを薄く切り玉葱と牛酪で煎り付け、ソップを沢山入れスチウのソースを少し加えて煮、揚げたパンを載せて出す(=英国式 hashed beef の転写。飯は用いない)。NDLデジタルコレクション原本スキャン 重み5
- 反証 新訳英和辞典(神田乃武ほか編、三省堂、1902年=明治35)— 見出し minced meat の訳語に「剉砕肉 ハヤシ肉」を当てる。明治期の日本語で「ハヤシ(肉)」が人名と無関係な一般名詞=細かく刻んだ肉を指す語として辞書に載っていたことを示す。NDLデジタルコレクション 重み5
- 反証 外来新語辞典(1932年=昭和7)— 「ハイシライス〔名〕hash and rice(英)飯ニキザミ肉ヲカケタ西洋料理。」同時代の外来語辞典が語源を英語 hash と明記する。NDLデジタルコレクション 重み5
- 反証 万国新語大辞典(1935年=昭和10)— 「ハツシ(Hash)肉やキヤベツ等をこま切りにして煮た料理でハイシライス及びハイシビーフ等がある。」「ハイシライス ハヤシライスと同じ。」ハツシ/ハイシ/ハヤシが同一語(Hash)の異表記であることを同時代の辞典が明記する。NDLデジタルコレクション 重み5
- 反証 和清西洋料理法自在(1898年=明治31)— 「ドライハヤシ」の項。英語 dry hash の転写で、人名では説明できない「ハヤシ=hash」の用法を示す明治期の料理書。NDLデジタルコレクション 重み5
- 言及 ハヤシライス — Wikipedia(日本語)語源3説(早矢仕有的説/上野精養軒の林コック説/hashed beef説)と文献初出の整理。脚注の原典へ辿る索引として使用 重み1
検証ログ 追記専用の監査証跡
| 日付 | 結果 | 確度 | 主張 / 出典 | 更新者 |
|---|---|---|---|---|
| 2026-08-21 | 支持 | D→B |
日本での初出は1888年『軽便西洋料理法指南』の「ハヤシビフ」で、冷えたロースビフを薄切りにし玉葱・牛酪で炒め、ソップとスチウのソースで煮て揚げパンを載せる英国式 hashed beef のレシピである
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polisher-1 |
| 2026-08-21 | 支持 | B→B |
その英国側の原型は18世紀以来の cold meat cookery で、1747年 Hannah Glasse に Hash Beef the same Way、1861年 Beeton にレシピ628 HASHED BEEF (Cold Meat Cookery) がある
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polisher-1 |
| 2026-08-21 | 支持 | B→B |
1861年 Beeton のレシピ628 HASHED BEEF (Cold Meat Cookery) は冷えたローストビーフの薄切りを、みじん玉葱と小麦粉でとろみを付けた褐色のグレービーで煮る
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polisher-1 |
| 2026-08-21 | 支持 | B→B |
明治期の日本語でハヤシは人名でなく一般名詞で、英和辞典が minced meat の訳語に「ハヤシ肉」を当てている
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polisher-1 |
| 2026-08-21 | 支持 | B→B |
同時代の外来語辞典が語源を英語 hash と名指しし、ハヤシとハイシが同一語であることを明記する
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polisher-1 |
| 2026-08-21 | 反証 | D→D |
ハヤシライスの名は丸善創業者 早矢仕有的に由来する
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polisher-1 |
| 2026-08-21 | 反証 | D→D |
ハヤシライスの名は上野精養軒のコック「林」の賄いに由来する
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polisher-1 |
| 2026-08-21 | 不明 | B→B |
ビーフストロガノフ(#25)とハヤシライス・ハッシュドビーフを系譜で結ぶ史料は無く、dish_relations を張らない
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polisher-1 |
| 2026-08-21 | 支持 | B→B |
日本語のハッシュドビーフはハヤシライスと同じ料理の別呼称で、独立した行を立てる根拠が無い
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polisher-1 |
構成素材
この料理を構成する素材の成立史へ。「成立史は準備中」の素材はまだページがありません。