食材から辿る / 新大陸(コロンブス交換)

ジャガイモ 素材 時期 C検証済

原産地 ペルー ・ 成立年代 前6000〜

ジャガイモが、いつ・どこで食べ物として成立し、各地へどう伝わったかをまとめています。 原産地での成立を3つの成立条件(食材・調理技術・場)で示し、その後の各地への到来を記録でたどります。

南米アンデス高地(現ペルー〜ボリビア、チチカカ湖周辺)で数千年前(およそ前8000〜前5000年)に栽培化。原産地では栽培化=食用が自明で同時成立

3つの成立条件

食材の条件
栽培化(アンデス高地で野生ジャガイモを栽培化)=数千年前
調理技術の条件
加熱調理(煮る・焼く)。苦味種は凍結乾燥のチューニョ加工で無毒化。加工・調理知はアンデスで在来
場の条件
食材入手と同年(原産地アンデスでの食用は栽培化=入手と同時に成立。場ゲートは退化)

ジャガイモはどこから広がったか

ジャガイモは南米アンデスの高地——現在のペルーからボリビアにかけて、チチカカ湖の周辺——を原産とし、数千年前から栽培されてきた作物である。旧大陸へ渡ったのはやはりコロンブス以後で、16世紀にスペイン人が大西洋を越えて持ち帰った。

ヨーロッパでの緩やかな受容

ヨーロッパでの歩みは遅かった。1567年にはアントウェルペンに植物として届いた記録があるが、食材として受け入れられるまでには長い時間がかかり、主食に育つのは17〜18世紀をかけてのことだった。当初は毒草の疑いや偏見もあって普及は進まず、転機となったのは各国政府の後押しである。スウェーデンでは18世紀後半に、ポルトガルでは1798年のマリア1世の勅令によって、ロシアでは1765年にエカチェリーナ2世の指令で種芋とともに栽培法が全国の県へ配布され、ジャガイモは寒冷地や痩せた土地でも実る作物として広まっていった。19世紀には工業都市の労働者の腹を支える基礎食料となる一方、1846〜52年にはロシア帝国領を含む各地を胴枯病が襲い、大きな飢饉を招いてもいる。

植民地を通じてアジア・アフリカへ

ヨーロッパの外へは、まず海洋交易路を通じて広がった。南アジアの西海岸へは17世紀に入ってからポルトガル経由で伝わったとみられるが、到来の年そのものは史料で特定できない。北インドの内陸には遅くとも1815年までに、現地の人々みずからの手で栽培が広まっていた。ベンガルでは1797年、東インド会社の取締役会が栽培を勧める回章を各県の徴税官へ送っている。イランへは1783年、ブシェール駐在の英国人がオランダ人の旧庭園で育てたジャガイモを口にしたという記録が最古で、のちに広まった「英国人ジョン・マルコムが持ち込んだ」という命名譚は、記録者自身がマルコムの渡航より前から現地の人々にこの根を配っていたと書き残しており、史実とは食い違う。ウクライナでは遅くとも1786年までに、農民の菜園でも珍しくない作物になっていた。ベラルーシでは1763年に菜園栽培の記録があるが、大衆の食卓に定着した年はなお特定できていない。アフリカでは1880年代に英国の入植者が東アフリカ高地へ持ち込み、ケニア山麓で在来の食に組み込まれていった。アンデスの高地作物は、こうしてほぼ全世界の温帯と高地の畑に根を下ろしたのである。

各地への伝来 71

各地で食べ物として定着した時期の記録です。地域によっては、それに先立つ物理的な到来(観賞用など、食用より前の前史)が含まれることがあります。

  • 前8000〜前5000年 アンデス 在来在地栽培
  • 前6000〜前3000年 チロエ 在来在地栽培
  • 1567〜1601年 ベルギー 新大陸交換在地栽培
  • 1570〜1600年 スペイン 新大陸交換
  • 1573〜1588年 イタリア 新大陸交換
  • 1580〜1600年 アイルランド 新大陸交換
  • 1587〜1594年 ポーランド 新大陸交換流通
  • 1588〜1593年 ドイツ 新大陸交換
  • 1590〜1597年 イングランド 新大陸交換
  • 1590〜1596年 スイス 新大陸交換
  • 1590〜1597年 英国 新大陸交換
  • 1593〜1594年 オランダ 新大陸交換
  • 1598〜1620年 日本 植民地交易
  • 1600〜1700年 デンマーク 新大陸交換
  • 1600〜1643年 ポルトガル 新大陸交換在地栽培
  • 1610〜1700年 南アジア 植民地交易
  • 1640頃 リトアニア 新大陸交換
  • 1647〜1694年 バイエルン 新大陸交換在地栽培
  • 1650〜1691年 アルザス 新大陸交換在地栽培
  • 1650〜1658年 スウェーデン 新大陸交換
  • 1670〜1745年 ベルギー 新大陸交換在地栽培
  • 1673〜1706年 ラトビア 新大陸交換
  • 1697〜1771年 スイス 新大陸交換
  • 1700〜1758年 ロシア 新大陸交換
  • 1700〜1719年 米国 新大陸交換在地栽培
  • 1715〜1770年 西欧 新大陸交換
  • 1720〜1800年 ポルトガル 新大陸交換
  • 1724〜1800年 スウェーデン 新大陸交換在地栽培
  • 1740〜1781年 エストニア 新大陸交換
  • 1740〜1779年 オランダ 新大陸交換在地栽培
  • 1740〜1810年 クロアチア 新大陸交換
  • 1749〜1800年 ケベック 新大陸交換在地栽培
  • 1750〜1800年 オーストリア 新大陸交換
  • 1750〜1780年 スイス 新大陸交換流通
  • 1750〜1758年 チェコ 新大陸交換
  • 1750〜1800年 ドイツ 新大陸交換流通
  • 1750〜1757年 ノルウェー 新大陸交換
  • 1750〜1800年 ポーランド 新大陸交換
  • 1759〜1837年 デンマーク 新大陸交換
  • 1760〜1775年 スロバキア 新大陸交換
  • 1763頃 ベラルーシ 新大陸交換在地栽培
  • 1765〜1850年 リトアニア 新大陸交換在地栽培
  • 1765頃 ロシア 新大陸交換
  • 1769〜1810年 ニュージーランド 植民地交易
  • 1769〜1830年 バルカン半島 新大陸交換
  • 1769〜1820年 ルーマニア 新大陸交換流通
  • 1770〜1786年 ウクライナ 新大陸交換
  • 1770〜1806年 ダルマチア 新大陸交換
  • 1770〜1800年 チェコ 新大陸交換
  • 1770〜1800年 ノルウェー 新大陸交換在地栽培
  • 1770〜1785年 フランス 新大陸交換流通
  • 1775〜1850年 スロバキア 新大陸交換
  • 1780〜1850年 ベラルーシ 新大陸交換
  • 1780〜1797年 ベンガル 植民地交易
  • 1783〜1800年 イラン 新大陸交換流通
  • 1790〜1822年 エストニア 新大陸交換
  • 1790〜1803年 ラトビア 新大陸交換在地栽培
  • 1793〜1803年 ネパール 植民地交易
  • 1800〜1880年 イタリア 新大陸交換在地栽培
  • 1800〜1916年 イラク 新大陸交換
  • 1800〜1805年 モロッコ 新大陸交換流通
  • 1800〜1815年 北インド 植民地交易流通
  • 1806〜1815年 ダルマチア 新大陸交換
  • 1810〜1900年 アナトリア 交易路
  • 1819〜1823年 スリランカ 植民地交易在地栽培
  • 1824〜1825年 朝鮮半島 交易路
  • 1827〜1850年 ミャンマー 植民地交易
  • 1850〜1870年 祖谷 植民地交易在地栽培
  • 1880〜1889年 ケニア 植民地交易
  • 1880〜1918年 東アフリカ 植民地交易
  • 1916頃 イラク 新大陸交換

どこまで広まったか

時期種別地域・媒体数量状態出典・注記
1916 同時代証言 イラク ・ 公的調査報告 — 観測
英海軍本部『A Handbook of Mesopotamia』Vol.I 農業章は、バグダード近郊の野菜一覧に potatoes を含めつつ the potato is a recent innovation, which has as yet found acceptance only with the well-to-do と明記する=第一次大戦期のイラクでジャガイモは在るが富裕層限定。ジャガイモを載せる料理(テプシ・バイティニジャン)が大衆に広がる段階の下限を与える

ジャガイモの到来が成立を縛った料理 77

ジャガイモが届く前には成り立たなかった料理です。到来年が、その料理の成り立ちうる最も早い年になります。

成立年不明 1

ジャガイモを使う料理 71

成立年不明 10

ジャガイモを含む取り合わせ 9

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