食材から辿る / その他・調査中

素材 時期 B検証済

成立年代 前6050〜

塩が、いつ・どこで食べ物として成立し、各地へどう伝わったかをまとめています。 原産地での成立を3ゲート(食材入手・調理技術・場)で示し、その後の各地への到来を記録でたどります。

意図的製塩の考古学的最古=前6050-5500 cal BC(ルーマニア Poiana Slatinei)

3ゲート

食材入手ゲート
岩塩採掘・海水/塩泉からの自然塩の採取(先史より普遍)。塩水を煮沸濃縮する意図的製塩は前6050年頃(ルーマニア Poiana Slatinei の年代下端)
調理技術ゲート
製塩(塩泉の塩水を土器・容器で煮沸して結晶化、岩塩採掘)。最古の実証は前6050-5500 cal BC のルーマニア Poiana Slatinei、次いで約前5600-5500 のブルガリア Provadia-Solnitsata
場ゲート
日常・食品保存(食材入手と同年)

塩はどこから広がったか

塩は、育てるものでも飼うものでもない。地層に眠る岩塩、海の水、地下から湧く塩泉——地面と海がもともと抱えている鉱物であって、どこかの土地で人が作り出した作物ではない。だから塩には、ほかの食材のような原産地がない。あるのは、塩を含む水や岩がどこにあるかという地理だけである。自然にできた塩をそのまま拾い、舐め、食べものに振ることは、先史の各地でごく普通に行われていた。

煮つめるという仕事

塩を手にする道は二つある。岩塩の層を掘り出す道と、海水や塩泉のように塩を溶かし込んだ水を火にかけ、水を飛ばして結晶を残す道である。後者——自然の塩を拾うのでなく、塩水を煮つめて結晶を意図して取り出す作業が、いま考古学の記録にもっとも早く現れるのは東欧の塩泉である。ルーマニアのモルダヴィア地方、ルンカ村に残るポイアナ・スラティネイでは、灰と炭と焼けた土が層をなす小さなマウンドが調べられ、九点の放射性炭素年代が紀元前6050年から前5500年を示した。塩泉の水を火にかけた跡で、報告した研究者たちはこれを世界最古の製塩と位置づけている。ブルガリアのプロヴァディア=ソルニツァータでも、紀元前5600年から前5500年ごろには、この用途のために作られた薄手の土器で塩水が煮つめられていた。拾う塩から、つくる塩へ。塩は、あるところから採るものであると同時に、つくれるものになった。

解池の紀元前6000年

塩の来歴を語る文章には、しばしば「中国では紀元前6000年ごろ、山西の解池(運城塩湖)の湖面から塩の結晶が採られていた」という一文が添えられ、これが世界最古の製塩として引かれる。ところが、この年代は考古の報告ではなく一般向けの本から来ている。出どころは2002年の通史『Salt: A World History』の一節で、著者は中国の歴史家たちがそう確信していると書くだけで、どの調査に拠ったのかを示していない。英語版ウィキペディアの塩の項目も、この年代の典拠としてこの本だけを挙げている。

中国の初期の製塩を正面から扱った研究は、話をずっと後に置く。重慶の中壩遺跡の土器を化学分析したフラッドらの2005年の研究は、それ以前に中国の初期の製塩を明確に示した研究は無いと断ったうえで、塩づくりをはっきり示せた最古の例として紀元前1千年紀を挙げた。自然に析出した塩を拾う営みなら各地にあり、解池の湖面もその一つだろう。支えを欠いているのは、その営みを紀元前6000年に置き、意図してつくられた塩の最古と呼ぶ部分である。

魚を留めておくために

用意できるようになった塩が真っ先に振り向けられたのは、味つけよりも保存だった。エジプトには、セケト・ヘマト——塩の国——と呼ばれる土地があった。中王国期の物語『雄弁な農夫』は、その塩の国に住む農夫が葦や木や石や種とともにナトロンと塩を積み、町へ下って他の品と交換する場面から始まる。写本は第12王朝の末から第13王朝、紀元前1750年ごろのものである。遅くともそのころには、塩は産地から運び出されて取引される品になっていた。その塩が食卓でどう働いたかを書き留めたのは、はるか後代のヘロドトスである。『歴史』第2巻は、エジプト人が魚を日に干して生のまま食べ、あるいは塩水に漬けて食べると伝えている。

同じことは東南アジアの内陸でも起きた。カンボジアでは、雨季に大量に獲れる淡水魚を塩とともに漬け込み、発酵させて年じゅう食べる保存食——のちにプラホックと呼ばれる魚の漬けもの——が営まれてきた。塩そのものは紀元前2000年ごろにはこの土地で得られており、この保存食を成り立たせる一角である。

魚も肉も乳も、放っておけば腐る。塩はそれを止める。原産地を持たないこの鉱物が世界じゅうの台所で欠かせない素材になったのは、味を決める力と同じくらい、時間を止める力によってである。

各地への伝来 2

各地で食べ物として定着した時期の記録です。地域によっては、それに先立つ物理的な到来(観賞用など、食用より前の前史)が含まれることがあります。

  • 前2000頃 カンボジア 在来
  • 時期不明 エジプト 在来

塩を使う料理 155

成立年不明 31

成立の下限(いつ以降か)が史料から決まらない料理。年代順には置けないのでここへ分けた ── いちばん古いという意味ではない。 「遅くとも◯年までに」はその年までに存在したことが押さえられているという意味で、その年に成立したという意味ではない。

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