中世ドイツの焼きソーセージ、ブラートヴルスト。その最古の記録として「1313年のニュルンベルクの条例」がよく挙げられるが、その条文には年も、ブラートヴルストという名も書かれていない。
検証ハイライト 俗説 → 判定 → 根拠
- 主な説
- ドイツでブラートヴルストが最初に記録されたのは1313年のフランケン地方ニュルンベルクの規制だとする通説。もとになる条文『Alle sweine…
- 判定
- 諸説あり
- 主な根拠
- 不明Joseph Baader (Hg.)『Nürnberger Polizeiordnungen aus dem XIII bis XV Jahrhundert』(Bibliothek des Litterarischen Vereins in Stuttgart LXIII, Stuttgart 1861) — ニュルンベルク市条例集の翻刻。VI. Victualien-Polizei「4. Vom Fleisch」に『Alle sweinein lempraten sol man in die wurste hacken』(豚のロース肉はすべてソーセージに刻むべし)。底本は市文書館写本Nr.314(13〜14世紀の条例集成)一次史料 支持Must the History of the Bratwurst Be Rewritten? — The Sausage Haus (2000年発見のアルンシュタット1404年会計記録=語Bratwurst初出を論じる)一般書・報道
3つの成立条件
- 食材の条件
- 豚肉(在来・旧大陸/中欧に新石器以来。仔牛肉を混ぜる地域変種あり)+腸(ケーシング)。いずれも在来ゆえ律速でない。
- 調理技術の条件
- 挽き肉(brät=細切り肉)を腸詰めにするソーセージ製法+焼く/揚げる(braten)。ソーセージ製法自体は古代ローマに遡る在来技術。
- 場の条件
- 中世後期ドイツ都市の食肉業(Metzger/ギルド)。ニュルンベルク(フランケン)・テューリンゲンの都市食文化で名物として定着。
起源説
諸説併記
テューリンゲン(アルンシュタット)1404年初出説 C
語『Bratwurst』そのものの最古の明示的初出は、テューリンゲン地方アルンシュタットの1404年の修道院会計記録(ソーセージ用の腸=ケーシング購入の記帳)で、この史料は2000年に発見されテューリンガー・ロストブラートヴルストの独立した文献系譜(1404アルンシュタット→1432ヴァイマル条例→1613年レシピ)を示す。ニュルンベルク系とは別系統。
通説を否定したが起源不明
ニュルンベルク(フランケン)1313年初出説 D
ドイツでブラートヴルストが最初に記録されたのは1313年のフランケン地方ニュルンベルクの規制だとする通説。もとになる条文『Alle sweinein lempraten sol man in die wurste hacken』(豚のロース肉はすべてソーセージ…続きを読む
ドイツでブラートヴルストが最初に記録されたのは1313年のフランケン地方ニュルンベルクの規制だとする通説。もとになる条文『Alle sweinein lempraten sol man in die wurste hacken』(豚のロース肉はすべてソーセージに刻むべし)は実在し、Baader が1861年に翻刻した市の条例集にも、名称保護団体のサイトにも同じ文が引かれる。ただし二つの点で通説はそのままでは成り立たない。一つは年で、条文そのものに年は書かれておらず、ニュルンベルク州立文書館長は成立を1306〜1315年の間までしか絞れないとする(2013年の通信社の記事)。1313年は、保護団体の会長が、同じ年の6月に市が皇帝から市場の事柄について法を定める自治を認められたことから推した年である。もう一つは語で、条文はソーセージ(wurste)とだけ書き、ブラートヴルストの名を出さない。同じ翻刻で焼きソーセージ(pratwürste)の名が出るのは15世紀の条例の部である。この条文は、ニュルンベルクで豚肉のソーセージが14世紀初めまでに規制されていたことを示すが、ブラートヴルストの最初の記録とは言えず、ブラートヴルストがどこで生まれたかは決まっていない。ニュルンベルクの細い焼きソーセージ自体は1567年に別に文献に現れる。
- 言及 Joseph Baader (Hg.)『Nürnberger Polizeiordnungen aus dem XIII bis XV Jahrhundert』(Bibliothek des Litterarischen Vereins in Stuttgart LXIII, Stuttgart 1861) — ニュルンベルク市条例集の翻刻。VI. Victualien-Polizei「4. Vom Fleisch」に『Alle sweinein lempraten sol man in die wurste hacken』(豚のロース肉はすべてソーセージに刻むべし)。底本は市文書館写本Nr.314(13〜14世紀の条例集成)一次史料
- 言及 Werner Schultheiß(ニュルンベルク市公式サイト掲載の『Stadtrecht Nürnberg』歴史序論・Hartmut Frommer 補訂)「III. Die Reichsstadt (1254/72 bis 1806)」の節 Entfaltung der Verfassung専門事典・公的機関
- 言及 Schutzverband Nürnberger Bratwürste e.V.「Nürnberger Bratwurst」(保護団体の公式サイト・英語版ページ)一般書・報道
- 反証 Judith Zischler(dpa)「700 Jahre Nürnberger Bratwurst」Ärzte Zeitung オンライン版 2013-09-03一般書・報道
- 支持 Bratwurst — Wikipedia (英語版・文献初出1313ニュルンベルク/1404アルンシュタットの索引)ブログ・百科本文
解説
ブラートヴルストは、細かく挽いた肉を腸に詰め、焼いたり揚げたりして食べるドイツの腸詰である。豚肉を主とし、地域によっては仔牛肉を混ぜる。中欧では豚も、詰め袋になる腸も古くから手に入る素材で、肉を腸に詰めるソーセージ作りそのものは古代ローマにさかのぼる。
この腸詰が地域の名物として定着していくのは、中世後期のドイツの都市においてである。食肉業者(メッツガー)のギルドのもとで肉が商われ、フランケン地方のニュルンベルクやテューリンゲン地方の街の食文化のなかで、それぞれの焼きソーセージが名物になった。ニュルンベルクの細い焼きソーセージ(ニュルンベルガー・ブラートヴルスト)は1567年に文献に現れる。
検証ストーリー
ブラートヴルストの最古の記録としてよく知られるのは、フランケン地方の都市ニュルンベルクが1313年に肉屋に課したという規制である。条文は「豚のロース肉はすべてソーセージに刻むべし」と命じ、ほかの売り方をした者は2シリングを払うと定める。この条文は市の条例集に実在し、1861年に刊行された条例集の翻刻にも収められている。
ただし、条文そのものに年は書かれていない。ニュルンベルクの州立文書館長は、この条例が定められた時期を1306年から1315年のあいだまでしか絞れないとしている。1313年という年は、ニュルンベルクのブラートヴルストの名称を守る団体の会長が、その年の6月に皇帝が市に市場の事柄について法を定める自治を認めたことから推した年である。条文の語も、ブラートヴルストではなく、ただのソーセージ(wurste)だ。同じ翻刻で焼きソーセージ(pratwürste)の名が出てくるのは、15世紀の条例を集めた部になってからである。この条文から言えるのは、ニュルンベルクで14世紀の初めまでに豚肉のソーセージが規制されていたことまでで、ブラートヴルストの最初の記録とまでは言えない。
もう一つの手がかりは、テューリンゲン地方のアルンシュタットにある。「ブラートヴルスト」という語そのものの最古の用例とされるのは、1404年の修道院の会計記録——ソーセージ用の腸を買い入れた記帳——で、この史料は2000年に見つかった。ここから、1404年のアルンシュタットに始まり、1432年のヴァイマルの条例、1613年のレシピへと続くテューリンゲン独自の系譜がたどれるとされる。
ブラートヴルストがどこで生まれたかは、まだ決まっていない。肉を腸に詰めるソーセージ作りは古代にさかのぼり、ニュルンベルクの条文もアルンシュタットの会計記録も、遅くともその頃にはそれぞれの土地にソーセージがあったことを伝えるにとどまる。
検証ログ 7 件・押すと開く
| 日付 | 結果 | 確からしさの変化 | 主張 / 出典 |
|---|---|---|---|
| 2026-07-15 | 支持 | —→C |
ドイツにおけるBratwurstの文献初出は1313年ニュルンベルク(フランケン)の腸詰規制
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| 2026-07-15 | 支持 | —→C |
語『Bratwurst』自体の明示的初出は1404年アルンシュタット(テューリンゲン)の会計記録(2000年発見)
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| 2026-08-15 | 反証 | C→C |
🚫 この記述は後の検証で訂正された(→ 該当行へ) 1313年ニュルンベルクの腸詰規制が語Bratwurstの文献初出である
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| 2026-10-08 | 不明 | C→C |
1313年のニュルンベルクの規制がブラートヴルストの最も古い記録だとする通説は、Baader が1861年に翻刻した条例集だけでは退けられない
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| 2026-10-08 | 反証 | B→B |
ブラートヴルストの成立下限は1313年(ニュルンベルクの規制の年)である
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| 2026-10-19 | 反証 | C→D |
ブラートヴルストの最も古い記録は1313年のニュルンベルクの規制だとする通説は、条文に年が無く(成立は1306〜1315年の間までしか絞れない)、1313年は保護団体の推した年で、条文の語もソーセージ(wurste)なので、そのままでは成り立たない
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| 2026-10-19 | 不明 | C→C |
Baader の翻刻でニュルンベルクの焼きソーセージ(pratwürste・protwürste)の名が出る『Von den Würsten』の条は、1404年より前の記録か
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構成素材
この料理を構成する素材の成立史へ。