一覧 / 西欧 / 英国・アイルランド料理
日曜のロースト肉に添えて焼く、ふっくらとふくらんだイングランドの生地料理。「ヨークシャー」の地名を冠するが、その名がついたのは一七四七年の料理書でのことで、料理そのものはそれ以前から「dripping pudding(滴り落ちる脂のプディング)」の名で作られていた。
3つの成立条件
- 食材の条件
- 小麦粉(英国では古代からの主要穀物=在来。律速せず)・卵・牛乳・滴脂(ロースト肉の脂)
- 調理技術の条件
- ロースト肉の下でバター生地を焼き、滴り落ちる脂を活かして膨らませる技法(dripping pudding)
- 場の条件
- 北イングランド(ヨークシャー)の家庭・日曜ロースト。18世紀の料理書で名称と製法が定着
成立年代と成立条件
調理技術(1737年に成立)が最後に揃った条件で、成り立ちうる最も早い年はその条件が揃った年になる。成立年代の帯は、その年以降にある。場の条件(料理が成立し広まった場)は年で表せないので、図には出さない。
- 調理技術
- 太線=最後に揃った条件(最も遅い=成立を縛る)
- 細線=既に充足
- 場の条件(年で表せないので図には出さない)
起源説
定説
dripping pudding 起源とヨークシャー命名 B
ロースト肉の下でバター生地(小麦粉・卵・牛乳)を焼き滴脂を活かすプディングは、『The Whole Duty of a Woman』(1737)に "a dripping pudding" として印刷物初出。18世紀の料理書家 Hannah Glasse が『The Art of Cookery Made Plain and Easy』(1747)で初めて "Yorkshire pudding" の名を用いた。名称は北イングランド(ヨークシャー)でロースト下の滴脂を活かす調理法が定着したことに由来する。技法自体は印刷初出以前から行われていた(初出で発祥そのものではない)。
- 支持 Hannah Glasse『The Art of Cookery Made Plain and Easy』初版 (London: printed for the author, and sold at Mrs. Ashburn's, a china shop, the corner of Fleet-Ditch, 1747)(Internet Archive 全文OCR・アイテムID: artofcookerymade00glas・Getty Research Institute 所蔵本)一次史料
- 支持 The Whole Duty of a Woman: or, an Infallible Guide to the Fair Sex (London: printed for T. Read, 1737)「A Dripping Pudding」— 'MAKE a good Batter as for Pancakes; put it in a hot Toss-pan over the Fire with a Bit of Butter… then put the Pan and Batter under a Shoulder of Mutton instead of a Dripping-pan'=ヨークシャー・プディング技法の最古級レシピ(archive.org 全文で逐語確認)一次史料
- 支持 Hannah Glasse: How Her Yorkshire Puddings Rose to Legendary Status - Inverse一般書・報道
- 言及 Yorkshire pudding - Wikipediaブログ・百科本文
解説
いつ・どこで生まれたか
ヨークシャープディングは、小麦粉・卵・牛乳を合わせたゆるい生地を、ロースト肉の下で焼く料理である。串に刺した肉から滴り落ちる脂を生地が受けとめ、その脂の熱でふっくらと大きくふくらむ。小麦はイングランドで古代からの主要な穀物であり、卵も牛乳もロースト肉の脂も、日々の台所にあるものだった。人々は、肉の下にこの生地を置き、滴り落ちる脂を受けて焼き上げる工夫を重ねていった。
この調理法は、イングランド北部で古くからおこなわれていた。印刷物にはじめて姿を現すのは、一七三七年の『The Whole Duty of a Woman』で、そこには "a dripping pudding" として記されている。生地を焼いて脂を活かすという技法自体は、この印刷初出よりも前から家庭の日曜ローストのなかに息づいていた。
名前が変わるのは、その十年後のことだ。十八世紀の料理書家ハンナ・グラスが、一七四七年の著書『The Art of Cookery Made Plain and Easy』のなかで、この料理を初めて "Yorkshire pudding" と呼んだ。北イングランドのヨークシャーで、ロースト下の滴脂を活かす焼き方が定着していたことが、その名の由来とされる。
検証ストーリー
「ヨークシャープディング」という名は、いかにもヨークシャーで生まれた土地の名物のように響く。だが名前の来歴をたどると、話はもう少し込み入っている。
この料理が印刷物に最初に現れるのは一七三七年、『The Whole Duty of a Woman』においてで、そこでの呼び名は "a dripping pudding"、すなわち滴り落ちる脂のプディングだった。ヨークシャーの名を冠したのは、その十年後の一七四七年、料理書家ハンナ・グラスである。彼女が『The Art of Cookery Made Plain and Easy』で "Yorkshire pudding" と書いたことで、この名が広まっていった。グラスの命名が料理を伝説的な地位へ押し上げた経緯は、彼女に光を当てた記事(Inverse)でも紹介されている。
つまり、地名を冠した名は料理そのものより後からついたものであり、一七三七年という印刷初出も、遅くともその頃には作られていたことを示すにすぎない。滴る脂で生地を焼く技法は、印刷に残るより前から北イングランドの日曜ローストのなかにあった。名が先にあって料理が生まれたのではなく、すでにあった料理に、あとから土地の名が与えられたのである。この見立ては、いまでは料理史の定説となっている。
検証ログ 3 件・押すと開く
| 日付 | 結果 | 確からしさの変化 | 主張 / 出典 |
|---|---|---|---|
| 2026-07-15 | 支持 | —→B |
1737『The Whole Duty of a Woman』のdripping puddingが初出、1747 Hannah Glasseがヨークシャープディングと命名
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| 2026-08-30 | 支持 | B→B |
ロースト肉の下でバッター生地を焼く技法は1737年に『ドリッピング・プディング』の名で印刷され、1747年の Hannah Glasse 初版で『ヨークシャー・プディング』と名づけられた
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| 2026-10-02 | 支持 | B→B |
成立年の下限に入っていた1737年は、『The Whole Duty of a Woman』が羊肩肉の下でバッターを焼く A Dripping Pudding を他のプディングと並ぶ1品の作り方として載せた年であり、その年にこの技法が始まったことを示す記述は本文に無い。1737年は『遅くともこの年には在った』側の年で、下限は史料からは定まらない
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構成素材
この料理を構成する素材の成立史へ。