食材から辿る / 旧大陸

羊肉 素材 時期 B検証済

成立年代 -7000〜

羊肉が、いつ・どこで食べ物として成立し、各地へどう伝わったかをまとめています。 原産地での成立を3ゲート(食材入手・調理技術・場)で示し、その後の各地への到来を記録でたどります。

前7000年ごろアナトリアで羊の家畜化・肉利用成立

3ゲート

食材入手ゲート
家畜化(アナトリア〜周辺で野生ムフロンから羊を家畜化、約9000年前=入手)
調理技術ゲート
屠畜・加熱調理(焼く・煮る)
場ゲート
食材入手と同年=家畜化とともに肉利用として食用成立

羊肉はどこから広がったか

羊肉、すなわち家畜の羊の肉は、麦や牛と並んで、西アジアに生まれた農耕のいちばん古い担い手のひとつである。家畜の羊のもとになったのは、山地に棲む野生のヒツジ——ムフロンと呼ばれる種で、これが飼い慣らされたのは、肥沃な三日月地帯の一角、いまのアナトリア(トルコ)からその周辺にかけての土地で、およそ9000年前——紀元前7000年ごろのことだった。世界じゅうの羊の血筋をさかのぼった遺伝の研究(ケッサらの2009年の報告)は、この一帯で野生のムフロンから羊が生まれ、そこから幾筋にも分かれて各地へ広がっていったことを跡づけている。羊は、小麦・大麦・山羊・牛とともに、農耕という営みそのものの一員として、四方へと運ばれていった。

東へ——草原と山の道をたどって

羊は早くから東へ向かった。南アジアの入り口、いまのパキスタンにあるメヘルガルの集落では、紀元前5000年ごろにはすでに羊が飼われていた。さらに内陸へ入ると、中央アジアの山あいには、青銅器時代の紀元前3000年ごろに、遊牧を営む人々の手で羊がもたらされ、根づいた(スペングラーらの2014年の研究)。この草原と山の回廊を通って、羊はやがて東アジアへ達する。中国内陸へ羊が入ったのは紀元前3000年ごろのことで、直接に年代を測った最も古い羊の骨は、さらにさかのぼって紀元前4400年ごろにまで届く(ドッドソンらの2014年の研究)。西アジアに生まれた家畜は、こうして内陸アジアを横切って中国まで達したのである。

アフリカの南へ

羊はアフリカ大陸を南へも下っていった。牛や山羊を追う牧畜の民が、東アフリカから少しずつ南へ移り住むにつれて、羊もともに連れられていった。大陸の南端に近い南部アフリカに羊が現れるのは、いまからおよそ2000年前——紀元前後のことである。骨に残るたんぱく質を調べた研究(クトゥーらの2021年の報告)が、この地でもっとも古い家畜の羊がこのころのものであることを確かめている。

大航海時代、そして近代

羊が海を越えて新大陸へ渡るのは、大航海時代を待ってのことだった。スペイン人は、イベリア半島で毛用に飼われていたチュラ種の羊を大西洋の向こうへ運び、南米のチリには16世紀なかば——1540年ごろから羊が入っている(ブッツァーの1988年の研究)。それよりずっと遅れて羊が加わった土地もある。日本の北海道では、第一次世界大戦のころ、羊毛を国内でまかなうための牧羊が国の後押しで始まり、1918年前後に緬羊の飼育が本格化した。肥沃な三日月地帯の山ぎわで飼い慣らされた一頭の羊は、こうして9000年をかけて、世界じゅうの草地に散らばっていったのである。

各地への伝来 15

各地で食べ物として定着した時期の記録です。地域によっては、それに先立つ物理的な到来(観賞用など、食用より前の前史)が含まれることがあります。

  • 前8500〜前7500頃 レバント 在来
  • 前7000頃 アナトリア 在来
  • 前7000頃 ギリシャ 在来
  • 前6000〜前5500頃 バルカン半島 在来
  • 前5000頃 パキスタン 在来
  • 前4400〜前3000頃 中国 交易路
  • 前4000〜前2000頃 中央アジア 在来
  • 前3000〜0頃 北欧 在来
  • 前2700頃 モンゴル 在来
  • 前300〜300頃 南アフリカ 在来
  • 1000頃 ジョージア 在来
  • 1200頃 スコットランド 在来加工
  • 1520〜1600頃 メキシコ 新大陸交換
  • 1540〜1568頃 チリ 植民地交易
  • 1914〜1925頃 北海道 近代畜産導入在地栽培

羊肉の到来が成立を縛った料理 10

羊肉が届く前には成り立たなかった料理です。到来年が、その料理の物理的な下限になります。

羊肉を使う料理 72

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