食材から辿る / 新大陸(コロンブス交換)
トウモロコシ 素材 時期 B検証済
トウモロコシが、いつ・どこで食べ物として成立し、各地へどう伝わったかをまとめています。 原産地での成立を3ゲート(食材入手・調理技術・場)で示し、その後の各地への到来を記録でたどります。
中米バルサス川流域での栽培化(前7000年頃)=原産地での食材入手と食用成立が同年
3ゲート
- 食材入手ゲート
- 栽培化=食材入手。中米(メキシコ南西部バルサス川中流域)で前7000年頃に野生テオシントから栽培化(Piperno et al. 2009・石器のデンプン粒/プラント・オパール)。到来台帳: 在来@中米/メキシコ -7000(幅-9000〜-5000)
- 調理技術ゲート
- 脱粒・製粉・加熱調理。後にニシュタマル化(灰汁処理)で栄養価向上。栽培化と同時に基本調理は成立
- 場ゲート
- 在地の食として成立=食材入手と同年。栽培化=食用が自明の穀物で場ゲートは退化(捏造しない)
トウモロコシはどこから広がったか
トウモロコシは中央アメリカの原産で、現在のメキシコ南西部、バルサス川の中流域で栽培化された作物である。植物学と考古学の研究(ピペルノらの2009年の報告)は、およそ紀元前7000年ごろ、この谷でテオシントと呼ばれる野生のイネ科植物からトウモロコシが育てられ始めたことを、石器に残るデンプン粒やプラント・オパールから跡づけている。栽培化ののち、トウモロコシは長い時間をかけて南北アメリカ各地へ広がった。北米東部にはおよそ11世紀(紀元1000年前後)、南米のチリ南部(アラウカニア地方)にも同じころ達し、土器に残る有機物の分析からその利用が確かめられている。
大西洋を越えて
トウモロコシが原産地の外へ出るのは、コロンブスの航海を待ってのことだった。1493年、コロンブスは第一次航海の帰路にトウモロコシをスペインへ持ち帰り、同じ年に人文学者ピエトロ・マルティーレがこの見慣れぬ穀物を書きとめている。地中海沿岸への広がりは速く、イタリアでは16世紀前半に栽培が始まり、1534年にはヴェネツィアでヨーロッパ最初の図版が刷られた。この歩みはテナイヨンとシャルコセの2011年の研究が整理している。
三つの道で東アジアへ、そしてアフリカへ
旧大陸の内側では、トウモロコシは複数の経路を同時にたどって広がった。西アフリカへはポルトガル人が16世紀半ば(1550年ごろ)に大西洋岸へもたらし、以後、内陸へと栽培が伸びていった(ミラクルの1965年の研究)。中国の文献に初めて明確に現れるのは1560年、『平涼府志』の記録である。近年の研究(2024年)は、中国へのトウモロコシがシルクロード経由、ポルトガル人によるインド・ミャンマーから雲南への経路、そして東南沿岸への海路という三つの道をたどり、いずれも16世紀半ば以後だったことを示している。アフリカ大陸の内部では、東アフリカに17世紀(1634年ごろ以降)、南アフリカに17世紀半ば(1655年ごろ)に達した。東アフリカ高地のケニアで畑作物として広く根づくのは植民地期の20世紀初頭(1914年ごろ)のことだった。中央アメリカに生まれた一粒の穀物は、こうして数百年のあいだに世界の主要な穀物のひとつになった。
各地への伝来 21
各地で食べ物として定着した時期の記録です。地域によっては、それに先立つ物理的な到来(観賞用など、食用より前の前史)が含まれることがあります。
- 前9000〜前5000頃 ラテンアメリカ 在来
- 前9000〜前5000頃 中米 在来在地栽培
- 前8700〜前5000頃 メキシコ 在来在地栽培
- 前5000〜前4500頃 アンデス 在来在地栽培
- 前800〜1200頃 プエルトリコ 在来在地栽培
- 400〜1000頃 チリ 在来
- 600〜800頃 ジャマイカ 在来
- 800〜1200頃 ニューイングランド 在来在地栽培
- 800〜1100頃 米国南部 在来
- 1493〜1500頃 スペイン 新大陸交換
- 1500〜1534頃 イタリア 新大陸交換
- 1500〜1600頃 南西フランス 新大陸交換
- 1500〜1600頃 西アフリカ 新大陸交換
- 1502〜1550頃 カーボベルデ 新大陸交換
- 1550〜1560頃 中国 新大陸交換
- 1550〜1900頃 東アフリカ 新大陸交換
- 1570〜1690頃 バルカン半島 新大陸交換
- 1627〜1650頃 バルバドス 植民地交易
- 1650〜1718頃 ルーマニア 新大陸交換在地栽培
- 1655〜1750頃 南アフリカ 新大陸交換
- 1880〜1920頃 ケニア 植民地交易
トウモロコシの到来が成立を縛った料理 27
トウモロコシが届く前には成り立たなかった料理です。到来年が、その料理の物理的な下限になります。
- ウミータ アンデス前3000年ごろ
- カチャパ ベネズエラ前1000年ごろ
- タマレ メキシコ前1000年ごろ
- パモーニャ ブラジル前1000年ごろ
- グリッツ 米国南部800年ごろ
- アレパ コロンビア・ベネズエラ1000年ごろ
- ポロトス・グラナードス チリ1000年ごろ
- グアニメ プエルトリコ1200年ごろ
- ポソレ メキシコ1521年ごろ
- ポレンタ イタリア1530年ごろ
- カチュッパ カーボベルデ1550年ごろ
- ムクビル・ポージョ メキシコ・ユカタン半島1550年ごろ
- ケンケ ガーナ1600年ごろ
- コーンブレッド 米国南部1600年ごろ
- パヌーチョ メキシコ・ユカタン半島1600年ごろ
- プロヤ セルビア1600年ごろ
- カチャマク バルカン半島1650年ごろ
- ママリガ ルーマニア・モルドバ1650年ごろ
- ウムンクショ 南アフリカ1655年ごろ
- パパ レソト1655年ごろ
- ウガリ 東アフリカ1700年ごろ
- パップ 南アフリカ1700年ごろ
- ンシマ Malawi1700年ごろ
- ブランズウィックシチュー 米国南部1828年ごろ
- ギゼリ ケニア1880年ごろ
- ムキモ ケニア1880年ごろ
- ナチョス ピエドラス・ネグラス1940年ごろ
トウモロコシを使う料理 34
- ゴルディータ メキシコ前1200年ごろ
- ソペス メキシコ前1200年ごろ
- トラコヨ メキシコ前1200年ごろ
- トスターダ メキシコ前500年ごろ
- ププサ エルサルバドル600年ごろ
- サッコタッシュ 米国1300年ごろ
- ウエボス・ランチェロス メキシコ北部1520年ごろ
- ケサディーヤ メキシコ1521年ごろ
- トラユーダ メキシコ・オアハカ1521年ごろ
- ナカタマル ニカラグア1522年ごろ
- サンコチャード ペルー1540年ごろ
- パステル・デ・チョクロ チリ1540年ごろ
- カスエラ チリ1541年ごろ
- アヒアコ コロンビア1550年ごろ
- アヤカ ベネズエラ1550年ごろ
- バンク ガーナ1550年ごろ
- マンドカ Venezuela1550年ごろ
- ボリボリ パラグアイ1556年ごろ
- ソパ・パラグアジャ パラグアイ1573年ごろ
- アクプレ ガーナ1600年ごろ
- コーンミール・プディング ジャマイカ1600年ごろ
- サルブーテス メキシコ・ユカタン半島1600年ごろ
- マニストラ クロアチア1600年ごろ
- メヌード(メキシコ) メキシコ1600年ごろ
- ククー・アンド・フライングフィッシュ バルバドス1650年ごろ
- ファンジー アンティグア・バーブーダ1650年ごろ
- ダックヌー ジャマイカ1655年ごろ
- カルネ・アサダ メキシコ北部1700年ごろ
- ボロ・デ・フバ ブラジル1700年ごろ
- ブレックファストタコ 米国・テキサス1900年ごろ
- エスキーテス メキシコ1947年ごろ
- エローテ メキシコ1947年ごろ
- ガオネラ・タコス メキシコ1950年ごろ
- チリ・コーンブレッドサラダ 米国1955年ごろ