食文化圏 / 北米
米国北東部料理の成立史
北米の食文化圏「米国北東部」に属する料理 22 品の成立史。 いつ・どこで成立したかを、3ゲート(食材入手/調理技術/場)・確度2軸・検証ログで根拠まで辿れます。
この食文化圏の指紋 DB由来のデータ集計(装飾でなく事実)
成立年代の分布成立年代の分布(最古 1620 年〜最新 1981 年)。
食材は在来か外来か律速食材が在来(もとから現地にあった)か、外来(交易・開国・植民地交易などで届いた)かの比率。
在来 2 外来 5
所属する料理 22
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定番 クラムチャウダー
米国ニューイングランド 1830–1860
時B説C
ニューイングランドの白い貝のスープ、クラムチャウダー。土地の先住民が遠い昔から在来の貝を煮ていたこの海辺に、ブルターニュ由来の鍋煮込みが重なって生まれた一皿で、その名 chowder は英方言の「魚売り」jowter ではなく、フランス語で鍋を指す chaudière の訛りとされる。
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定番 エッグベネディクト
米国(ニューヨーク) 1860–1900
時B説C
イングリッシュマフィンにハム、ポーチドエッグ、とろりとしたオランデーズソース――ブランチの王様エッグベネディクト。誰が考えたかをめぐっては、二日酔いの逸話まで含めて複数の説が今も並び立つ。
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定番 ホットドッグ
米国・ニューヨーク 1860–1900
時B説B
ホットドッグには「コニーアイランドのフェルトマンが初めて屋台で売った」「フォイヒトヴァンガーがバンを発明した」「ドーガンの漫画が命名した」という発祥譚が付きまとうが、フード史家はそのいずれにも証拠がないと退けた。残るのは、ドイツ系移民がソーセージをパンに挟む形を19世紀の都市で漸進的に広めたという、単一の発明者のいない経緯である。
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定番 パストラミ
米国ニューヨーク 1870–1920
時B説D
誰がいつニューヨークで最初のパストラミを作ったのか——Sussman Volkだ、いやKatz'sだ、と語り継がれてきた発祥譚は、どれも独立した史料の裏づけを欠く。確かなのは、東欧のユダヤ移民が故郷の保存肉を新大陸の牛肉で作り替えた、という一皿の来歴のほうである。
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定番 パストラミサンドイッチ
米国ニューヨーク 1870–1920
時C説D
ライ麦パンにパストラミを重ね、マスタードだけで挟むニューヨークの看板サンドイッチ。「1887年にサスマン・ヴォルクが米国初のパストラミ・サンドを作った」という有名な起源話は一家の言い伝えに拠るだけで裏づけを欠き、最初の一皿を誰が出したかは史料の上で決着していない。
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定番 ウォルドーフサラダ
米国・ニューヨーク 1890–1900
時B説B
リンゴとセロリをマヨネーズで和えたウォルドーフサラダは、ニューヨークの高級ホテルの宴会から生まれた一皿である。いまでこそ定番のクルミは、実は後の時代に足された素材だった。
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定番 ロブスターロール
米国メイン/ニューイングランド 1920–1940
時B説C
誰が最初に作ったのか――この問いに「コネチカットのパーリーズで1929年に発明された」と答える話は有名だが、史料はそれより一世紀古い別の流れを指し示す。ロブスターロールは、ひとりの発明者を持たない一皿である。
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定番 ニューヨークチーズケーキ
米国・ニューヨーク 1929–1935
時B説C
ニューヨークチーズケーキは、レストラン経営者アーノルド・ルーベンが1929年頃に発明したという話が広く流布する。だがこの発祥譚に同時代の独立した記録は伴わず、実際は市内のいくつものデリで並行して育ったとみられる。チーズケーキ自体は古代から続く古い菓子だが、この濃厚な焼き型は、19世紀後半に生まれた新しい素材から立ち上がった。
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ワイルドブルーベリーパイ
米国メイン/ニューイングランド 1620–1829
時B説B
いかにも建国前からの素朴なアメリカの味に見えるワイルドブルーベリーパイは、実のところ北米在来のベリーと入植者がもたらした小麦のパイ生地が出会って生まれた、来歴をたどれる比較的新しい菓子である。
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スクラップル
米国ペンシルベニア/デラウェア 1683–1850
時B説B
スクラップルは、豚の端肉や内臓を煮出した肉汁にコーンミールを練り込み、型で固めて薄切りにして焼く、ペンシルベニア・ダッチ(ドイツ系移民)の保存食である。アメリカ生まれの開拓料理に見えて、その骨格はドイツの屠畜期料理パンハスにあり、英語名が印刷物に現れた1820年代は、この一皿が生まれた瞬間ではない。
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ベイクドビーンズ
米国ニューイングランド 1750–?
時B説B
ピルグリムが親切な先住民から教わった太古からの国民料理——ボストン・ベイクドビーンズにまつわるこの有名な起源話は、糖蜜で濃く甘く煮込んだ豆の実像とは裏腹に、19世紀後半に組み立てられた新しい由緒である。
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クラブケーキ
米国メリーランド(チェサピーク湾岸) 1850–1950
時B説C
メリーランドの名物クラブケーキは、チェサピーク湾の青ガニの身をほぐし、パン粉やクラッカーでつないで成形した地方料理だ。カニを食べる暮らしは先住民まで遡るが、「クラブケーキ」という名と今の形が定まったのは、十九世紀の終わり以降のことである。
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クラムケーキとチャウダー
米国(ロードアイランド州) 1850–1920
時B説B
クラムケーキ(刻んだクアホグ貝を衣に混ぜて揚げるフリッター)を、ナラガンセットの老舗海鮮店が1920年に生み出したという地元の言い伝えは、それより古い19世紀のレシピが残ることで覆される。作り手ひとりの発明ではなく、海辺の行楽地に育った一皿だった。
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チャプスイ(雑砕)
米国(広東系移民・中国広東) 1890–1910
時B説C
李鴻章のために考案されたという有名な誕生譚を持つチャプスイは、実際には在米広東系移民が米国人向けに作り上げたアメリカ中華の象徴である。
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テイラーハム・エッグ・アンド・チーズ
米国ニュージャージー 1900–1910
時C説B
「20世紀の初めにトレントンの露天商が考案した」と語り継がれるニュージャージー名物の朝食サンドイッチだが、その具体を伝える同時代の記録は一つも見つかっていない。挟まれる肉のほうは1872年の新聞広告から追えるのに、サンドイッチだけが史料に姿を見せない。
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ベイクドジティ
米国ニュージャージー 1900–?
時B説B
オーブンで焼き固めたチーズとトマトのパスタ、ベイクドジティ。イタリア本国の伝統料理と思われがちだが、その姿は南イタリアの婚礼料理を移民たちがアメリカの台所で作り替えたところに生まれた、イタリア系アメリカ料理である。
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フィリーチーズステーキ
米国フィラデルフィア 1930–1960
時B説B
薄切りの牛肉を鉄板で焼き、ロールパンに挟んだフィラデルフィアの名物。1930年頃にひとつの屋台から始まったことははっきりしているが、これを「チーズステーキ」にした一切れのチーズが、いつ・誰の手で・どんな種類で載ったのかは、いまも決着していない。
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クラブフライ
米国メリーランド(チェサピーク湾岸) 1939–1979
時B説C
「クラブフライ」という名前でありながら、カニは一片も入っていない。名前の「crab(カニ)」は、まぶしたスパイスの由来にすぎない。チェサピーク湾岸で長く愛されてきた、カニ肉なき"カニのフライ"である。
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ベイクド・アップルサイダードーナツ
米国ニューイングランド 1951–2000
時C説C
アップルサイダードーナツを、ニューイングランドの植民地時代から続く古い秋の味と思っている人は多い。だが今わたしたちが食べるこの菓子は20世紀の産物で、その古めかしい風情は後から付いた見かけの由緒である。
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バッファローウィング
米国・ニューヨーク(バッファロー) 1964–1970
時B説C
「1964年、バッファローのアンカー・バーで生まれた」——バッファローウィングの発祥はそう語られる。だが「最初に出した一軒」を名指すことは、誰にもできていない。
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ジェネラルツォチキン(左宗棠鶏)
米国ニューヨーク 1970–1980
時B説C
アメリカ中華の象徴ともいえる甘酸っぱい揚げ鶏ジェネラルツォチキン。その名を冠する清の将軍・左宗棠は、この料理を一度も口にしていない。料理が形になったのは、将軍の死から70年近くを経た台湾とニューヨークだった。
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メープル・クリーミー
米国(バーモント州) 1981–1981
時B説B
ヴァーモントの夏の顔であるメープル味のソフトクリーム「クリーミー」は、土地に古くから伝わる名物のように見えて、生まれたのは1981年である。州のメープル生産者の集まりと町の乳業が組んで作った、日付も顔ぶれもわかる新しい一皿だ。