食文化圏 / 中東・北アフリカ

エジプト料理の成立史

中東・北アフリカの食文化圏「エジプト」に属する料理 15 品の成立史。 いつ・どこで成立したかを、3ゲート(食材入手/調理技術/場)・確度2軸・検証ログで根拠まで辿れます。

この食文化圏の指紋 DB由来のデータ集計(装飾でなく事実)

この圏に特徴的な食材全圏平均より偏って多く現れる律速食材(=この圏に特徴的な素材)。汎用食材は突出しないので外れます。

  • 全圏平均の約 6.78 倍・4 品で律速(=この圏で偏って多く使われる食材)。

成立年代の分布成立年代の分布(最古 前2500 年〜最新 1850 年)。

  • 先史・古代 2
  • 中世 9
  • 近代 4

食材は在来か外来か律速食材が在来(もとから現地にあった)か、外来(交易・開国・植民地交易などで届いた)かの比率。

在来 3 外来 8

所属する料理 15

  • 定番 ハルヴァ エジプト 750–1250 時C説C

    ハルヴァは砂糖にゴマのペーストやセモリナ(粗挽き小麦)を練り込んで固める中東の甘い菓子である。紀元前3000年に遡るという触れ込みをしばしば見かけるが、この名を冠した菓子がたどれるのは10世紀のバグダードまでで、そこより前へさかのぼる裏づけはない。

  • フェシーク エジプト -2500–1900 時C説C

    エジプトの春祭シャンム・エンナシームに食べる発酵塩漬けのボラ、フェシーク。「ファラオの時代から途切れず受け継がれてきた古代そのものの料理」とよく語られるが、数千年を埋める記録は存在せず、その連続性は後世に編まれた物語である。

  • モロヘイヤ(ムルキーヤ) エジプト -1000–1000 時B説C

    刻んだ葉を煮込んで独特の粘りを出すエジプトの家庭料理モロヘイヤ。その名がアラビア語の「王たち(muluk)」に由来し、ファラオの滋養食「王の野菜」だったという有名な話は、音の似た言葉から後付けされた民間語源である。

  • ハマーム・マフシ エジプト 641–? 時C説C

    穀物を詰めた鳩の姿から「5000年の歴史」とうたわれるエジプトのハマーム・マフシ。だが鳩を食べる習慣は古代の本物の古層でも、米を詰めた今の料理はずっと新しい、中世以降の一皿である。

  • サヤディーヤ(エジプト) 900–1900 時C説B

    名に「漁師」を宿す、エジプト地中海沿岸の魚と米の一皿。飴色まで炒めた玉ねぎが米を琥珀に染めるこの港町の名物は、考案者も発祥年も伝わらないまま、米という一点がその成立の時期を思いのほか新しく指し示す。

  • フェティール・メシャルテト エジプト 900–1500 時C説C

    フェティールがマムルーク朝の時代に欧州へ伝わってクロワッサンになった、という話をときおり聞く。だがクロワッサンはオーストリアの三日月パン、キプフェルに連なるもので、エジプトのこの層状パンと結ぶ史料は無い。

  • フール・メダメス エジプト 1000–1500 時B説B

    エジプトの朝食に欠かせないソラマメの煮込み。古代ファラオの時代から続くとも語られるが、いまのかたちを決めた一晩のとろ火煮込みは、中世カイロで育った技だった。

  • バスブーサ エジプト 1300–? 時B説B

    セモリナをオーブンで焼き、熱いうちに甘いシロップを吸わせるエジプトの菓子バスブーサ。素朴な家庭のおやつに見えるが、その姿は9世紀の甘い穀物粥から数百年をかけて置き換わり、いまの形はオスマン期の地中海に定着したものである。

  • バーミヤ エジプト 1300–? 時C説B

    真っ赤なトマト煮込みとして知られるバーミヤだが、そのトマトは19世紀半ば以降に加わった新しい顔で、オクラと羊肉を煮込む一皿そのものは中世エジプトまでさかのぼる。

  • マハシ エジプト 1300–1800 時B説B

    くり抜いた野菜やブドウの葉に米を詰めて蒸し煮にするマハシは、古代エジプト由来とも語られる。だが現代のマハシを彩る食材も、最古の文献も、ファラオの時代には行き着かない。

  • ウンム・アリ エジプト 1800–1900 時C説C

    政敵の死を祝った13世紀の王妃が自らの名を冠したという有名な起源伝説を持つ、エジプトの国民的デザート、ウンム・アリ。だがその残酷な逸話も、19世紀のアイルランド女性オマリーの名が訛ったとする語源説も同時代の裏づけを欠き、名の由来はいまも分かっていない。

  • メサッアア エジプト 1800–? 時B説B

    エジプトの家庭料理メサッアア(مسقعة)は、名前だけなら中世アラブの文献にまで遡る古株だが、いま食卓に上がるニンニク入りトマトソースのナス煮込みそのものは、トマトが地中海世界に届いた19世紀以降にしか生まれようがなかった一皿である。

  • コシャリ エジプト 1850–1900 時B説C

    米とレンズ豆にマカロニを重ね、酸味のきいたトマトソースと揚げ玉ねぎをのせるエジプトの国民食コシャリは、ひとつの発祥地をもたない。古くからある米と豆の食べ方の上に、19世紀の地中海から渡ってきたパスタとトマトが重なってできた、由来の入り混じった一皿である。

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