食文化圏 / 南アジア
東インド・ベンガル料理の成立史
南アジアの食文化圏「東インド・ベンガル」に属する料理 15 品の成立史。 いつ・どこで成立したかを、3ゲート(食材入手/調理技術/場)・確度2軸・検証ログで根拠まで辿れます。
この食文化圏の指紋 DB由来のデータ集計(装飾でなく事実)
この圏に特徴的な食材全圏平均より偏って多く現れる律速食材(=この圏に特徴的な素材)。汎用食材は突出しないので外れます。
成立年代の分布成立年代の分布(最古 1000 年〜最新 1868 年)。
食材は在来か外来か律速食材が在来(もとから現地にあった)か、外来(交易・開国・植民地交易などで届いた)かの比率。
在来 3 外来 3
所属する料理 15
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定番 ラスグッラ
ベンガル地方(東インド) 1850–1900
時B説B
十二世紀からジャガンナート寺院で女神に供えられてきた——そう語られるラスグッラの名は、肝心の寺院初期の供物目録に見当たらない。たしかな足跡は十九世紀のベンガルから始まる。
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エッグ・ポーチ
インド(ビハール) ?–1993
時C説C
七つの穴が並ぶ鉄鍋で丸く焼き上がる姿から、インド・ビハールの屋台の卵焼きは日本のたこ焼きに由来すると語られることがある。だが両者を結ぶ記録は見当たらず、鍋のほうは南インドで古くから使われてきたパニヤラム鍋である。
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チングリマライカレー
バングラデシュ ?–?
時C説C
エビを椰子乳で甘くまろやかに煮込むベンガルのごちそう「チングリマライカレー」。その名の“マライ”を『マレー(Malay)のカレー』の訛りと見るか、ベンガル語で凝乳やクリームを指す『マライ』と読むか——広く語られる二つの語源説は、いずれも確たる文献の裏づけを欠いたまま並び立っている。
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ブナキチュリ
バングラデシュ ?–?
時C説B
ブナキチュリは、米と挽き割りの豆を一つの鍋で炊くベンガルの家庭料理で、米と豆を先に乾煎りしてから炊き上げる乾いた仕立てが持ち味だ。祖先にあたる「キチュリ」は南アジアでも指折りに古い一皿だが、この乾煎り版がいつベンガルで分かれたのかは、いまもはっきりしていない。
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ボルタ
バングラデシュ ?–?
時C説B
野菜や小魚を蒸し焼きにして摩り潰す、ベンガルの家庭料理ボルタ。摩り潰すという技そのものは古代ベンガルの台所まで遡るが、いまの一皿を赤く染める唐辛子は、新大陸から海を渡って十六世紀半ばにようやくこの地へ届いた。素朴な見た目に、二つの時代が重なっている。
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パンタバート
バングラデシュ 1000–1650
時C説B
バングラデシュの国民食パンタバートに、発明者も発祥の地もない。炊いた飯を水に浸して一晩おくだけの、残り飯を無駄にしない庶民の知恵が、そのまま朝の定番になった一皿である。
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ピタ
バングラデシュ 1000–1500
時B説B
ピタはベンガルの米粉菓子の総称で、これぞという発明者も、発祥の逸話も持たない。稲刈りを終えた冬の台所から立ちのぼってきた、名もなき作り手たちの菓子群である。
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マチェル・ジョル
ベンガル 1200–1700
時C説D
ベンガルの食卓に毎日のぼる魚の汁物。『ムガル帝国が持ち込んだ香辛料文化から生まれた』という話がよく語られるが、それより古い文献が、この料理を土地そのものの恵みとして描いている。
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ミシュティ・ドイ
ベンガル(ボグラ) 1500–1900
時C説C
ボグラのとある菓子職人が一代でこの甘いヨーグルトを発明した——そんな起源譚はベンガル各地で語られるが、どれも一次史料の裏付けを欠く後世の言い伝えである。
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ルチ
ベンガル 1600–1900
時B説B
ポルトガル人が白い小麦粉を持ち込んでベンガルの揚げパン、ルチが生まれた——広く語られるこの起源話は、揚げ小麦パンがそれよりずっと前から土地に根づいていたために成り立たない。
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モログポラオ
ベンガル 1610–?
時C説B
モログポラオは、ダッカを中心にベンガルで祝いの日に炊かれてきた鶏のポラオ(スパイスを効かせた炊き込みご飯)である。米も鶏もこの土地に古くからある素材だが、一皿としての姿は、ペルシャ由来の炊き込み技術がムガルの宮廷を経てダッカに根づいてから整った。
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ショルシェ・イリッシュ
ベンガル 1700–1900
時B説C
雨季のガンジス・デルタにのぼるヒルサ(イリッシュ)を、すりつぶしたマスタードのソースで煮含めたベンガルの名物魚料理。ムガルの香辛料文化が持ち込んだ料理だという話がしばしば語られるが、史料をたどると、マスタードで魚を仕立てる実践は宮廷の到来よりずっと前から川辺の家々に根づいていた。
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シンガラ
バングラデシュ 1800–?
時B説B
バングラデシュの街角で揚げたてが売られる三角のシンガラは、古くからベンガルにある土着の軽食だと思われがちだ。だが、この一皿を三角に包む生地も、なかにぎっしり詰まったジャガイモも、いずれも遠い土地から海と陸を渡ってきたものである。
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フチカ
バングラデシュ 1800–1950
時C説D
マハーバーラタの英雄ドラウパディーがフチカを考案した——ベンガルで語り継がれるこの起源伝説は、じゃがいもが新大陸から南アジアへ広まった年代と噛み合わない、時代錯誤の作り話である。
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ロショゴラ
Bangladesh 1868–?
時B説C
牛乳を酸で固めた「チェナ」から作る、ベンガルの弾む白い球菓子ロショゴラ。「ヴェーダの昔からある古代インドの伝統菓子」という語りは、そのチェナの製法が近世にポルトガル人を機にベンガルへ根づいたという食物史の前に崩れる。