食文化圏 / 南アジア

東インド・ベンガル料理の成立史

南アジアの食文化圏「東インド・ベンガル」に属する料理 15 品の成立史。 いつ・どこで成立したかを、3ゲート(食材入手/調理技術/場)・確度2軸・検証ログで根拠まで辿れます。

この食文化圏の指紋 DB由来のデータ集計(装飾でなく事実)

この圏に特徴的な食材全圏平均より偏って多く現れる律速食材(=この圏に特徴的な素材)。汎用食材は突出しないので外れます。

  • 全圏平均の約 2.99 倍・2 品で律速(=この圏で偏って多く使われる食材)。

成立年代の分布成立年代の分布(最古 1000 年〜最新 1868 年)。

  • 中世 3
  • 近世 4
  • 近代 4

食材は在来か外来か律速食材が在来(もとから現地にあった)か、外来(交易・開国・植民地交易などで届いた)かの比率。

在来 3 外来 3

所属する料理 15

  • 定番 ラスグッラ ベンガル地方(東インド) 1850–1900 時B説B

    十二世紀からジャガンナート寺院で女神に供えられてきた——そう語られるラスグッラの名は、肝心の寺院初期の供物目録に見当たらない。たしかな足跡は十九世紀のベンガルから始まる。

  • パンタバート バングラデシュ 1000–1650 時C説B

    バングラデシュの国民食パンタバートに、発明者も発祥の地もない。炊いた飯を水に浸して一晩おくだけの、残り飯を無駄にしない庶民の知恵が、そのまま朝の定番になった一皿である。

  • マチェル・ジョル ベンガル 1200–1700 時C説D

    ベンガルの食卓に毎日のぼる魚の汁物。『ムガル帝国が持ち込んだ香辛料文化から生まれた』という話がよく語られるが、それより古い文献が、この料理を土地そのものの恵みとして描いている。

  • ミシュティ・ドイ ベンガル(ボグラ) 1500–1900 時C説C

    ボグラのとある菓子職人が一代でこの甘いヨーグルトを発明した——そんな起源譚はベンガル各地で語られるが、どれも一次史料の裏付けを欠く後世の言い伝えである。

  • ルチ ベンガル 1600–1900 時B説B

    ポルトガル人が白い小麦粉を持ち込んでベンガルの揚げパン、ルチが生まれた——広く語られるこの起源話は、揚げ小麦パンがそれよりずっと前から土地に根づいていたために成り立たない。

  • モログポラオ ベンガル 1610–? 時C説B

    モログポラオは、ダッカを中心にベンガルで祝いの日に炊かれてきた鶏のポラオ(スパイスを効かせた炊き込みご飯)である。米も鶏もこの土地に古くからある素材だが、一皿としての姿は、ペルシャ由来の炊き込み技術がムガルの宮廷を経てダッカに根づいてから整った。

  • ショルシェ・イリッシュ ベンガル 1700–1900 時B説C

    雨季のガンジス・デルタにのぼるヒルサ(イリッシュ)を、すりつぶしたマスタードのソースで煮含めたベンガルの名物魚料理。ムガルの香辛料文化が持ち込んだ料理だという話がしばしば語られるが、史料をたどると、マスタードで魚を仕立てる実践は宮廷の到来よりずっと前から川辺の家々に根づいていた。

  • シンガラ バングラデシュ 1800–? 時B説B

    バングラデシュの街角で揚げたてが売られる三角のシンガラは、古くからベンガルにある土着の軽食だと思われがちだ。だが、この一皿を三角に包む生地も、なかにぎっしり詰まったジャガイモも、いずれも遠い土地から海と陸を渡ってきたものである。

  • フチカ バングラデシュ 1800–1950 時C説D

    マハーバーラタの英雄ドラウパディーがフチカを考案した——ベンガルで語り継がれるこの起源伝説は、じゃがいもが新大陸から南アジアへ広まった年代と噛み合わない、時代錯誤の作り話である。

  • ロショゴラ Bangladesh 1868–? 時B説C

    牛乳を酸で固めた「チェナ」から作る、ベンガルの弾む白い球菓子ロショゴラ。「ヴェーダの昔からある古代インドの伝統菓子」という語りは、そのチェナの製法が近世にポルトガル人を機にベンガルへ根づいたという食物史の前に崩れる。

← ほかの食文化圏を見る