食文化圏 / 中東・北アフリカ
イラク・メソポタミア料理の成立史
中東・北アフリカの食文化圏「イラク・メソポタミア」に属する料理 11 品の成立史。 いつ・どこで成立したかを、3ゲート(食材入手/調理技術/場)・確度2軸・検証ログで根拠まで辿れます。
この食文化圏の指紋 DB由来のデータ集計(装飾でなく事実)
この圏に特徴的な食材全圏平均より偏って多く現れる律速食材(=この圏に特徴的な素材)。汎用食材は突出しないので外れます。
成立年代の分布成立年代の分布(最古 700 年〜最新 1916 年)。
食材は在来か外来か律速食材が在来(もとから現地にあった)か、外来(交易・開国・植民地交易などで届いた)かの比率。
在来 1 外来 6
所属する料理 11
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タシュリーブ
イラク 700–?
時B説B
硬くなった薄焼きパンを、熱い肉と野菜のスープに浸してふやかす——イラクの食卓に根づくこの倹約食は、名前の記録から「いつ生まれたか」を決めようとすると正体を見失う。料理そのものが、名より遥かに古いからだ。
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クライチャ
イラク 800–1355
時C説C
イラクの国民的クッキー、クライチャ。女神イシュタルに捧げるため古代シュメールで焼かれた菓子がそのまま今に伝わる、という誇り高い物語には、その名前自身が異を唱えている。
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クージ
イラク 800–?
時C説C
羊を丸ごと米と木の実、香辛料で詰めて焼くイラクのクージ(quzi)は、前二〇〇〇年の粘土板にさかのぼる古代メソポタミア料理だと観光の場でしばしば語られる。だが米飯を詰めた現行の姿は、米がまだこの地に届いていない前二〇〇〇年には生まれようがない。
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ザラビア
イラク 800–?
時B説B
イラクの揚げ菓子**ザラビア**は、発酵させた生地を細く絞り出して油で揚げ、甘いシロップに漬けた甘味である。インド生まれの菓子として世界に知られる**ジャレビ**の元にあたり、その名は10世紀バグダードの料理書に、インド側の最初の言及より500年ほど早く現れる。
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マスグーフ
イラク 900–?
時C説C
マスグーフを「4500年前の古代メソポタミアから連綿と続く料理」とする話は、火で焼く技の古さを、料理そのものの古さにすり替えた物語である。ティグリスの魚を炙る技法は確かに古いが、いまのマスグーフが古代から途切れず続いた証拠はない。
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ファソリア・ヤブサ
イラク 1550–?
時B説B
チグリス・ユーフラテスの地で煮込まれる白インゲン豆の一皿は、いかにも古代メソポタミア以来の伝統食に見える。だが主役の白い豆は大西洋の向こうからやってきた新参者で、この煮込みはイラクの食卓では比較的新しい料理である。
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マルガト・バイティニジャン
イラク 1800–?
時C説B
イラクの家庭でつくられるナスの煮込み、マルガト・バイティニジャン。その赤いトマト味は近代になって加わったものだが、ナスを煮込む一皿そのものは、千年をこえる古層につながっている。
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マルガト・バーミヤ
イラク 1800–1900
時B説B
オクラと羊肉をトマトで煮込む、イラクの日常の一皿。古代メソポタミア以来の料理と思われがちだが、バグダードの市場にトマトが当たり前の野菜として書き留められるのは20世紀初頭のことで、赤い煮込みとしてのいまの姿はそれほど古くない。
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テプシ・バイティニジャン
イラク 1916–1950
時C説B
天板になすとミートボールを重ね、上にジャガイモを並べて焼くイラクの家庭料理。古代メソポタミア以来の味に見えるが、その上に載るジャガイモは、第一次大戦のころのバグダードではまだ富裕な家の食卓にしか届いていない目新しい作物だった。
成立年不明 2
成立の下限(いつ以降か)が史料から決まらない料理。年代順には置けないのでここへ分けた ── いちばん古いという意味ではない。