食材から辿る / 旧大陸
赤ワイン 素材 時期 C検証済
赤ワインが、いつ・どこで食べ物として成立し、各地へどう伝わったかをまとめています。 原産地での成立を3ゲート(食材入手・調理技術・場)で示し、その後の各地への到来を記録でたどります。
3ゲート
- 食材入手ゲート
- 原料は野生ブドウ Vitis vinifera sylvestris で、南コーカサス(ジョージア〜アルメニア〜北イラン)に在来=入手は成立と同時。重要なのは『赤』の側の条件で、野生ブドウの果皮は元来黒く(アントシアニンを蓄積する)、白ブドウのほうが VvmybA1 プロモーターへのレトロトランスポゾン Gret1 挿入、および VvmybA1/VvmybA2 の隣接2遺伝子の同時変異という後発の突然変異体である(Kobayashi et al. 2004 Science / Walker et al. 2007 Plant J.)。つまり黒ブドウ=赤ワインの原料は最初から手元にあり、白ワインの原料のほうが後から現れた。食材ゲート台帳: 赤ワイン@南コーカサス・前4000年(幅 前6000〜前4000)・在来/加工。スペインへの到来は在来ではなくフェニキア交易による前700年ごろ(幅 前900〜前600)
- 調理技術ゲート
- 律速はここ。赤ワインの成立条件は (1) 発酵と貯蔵に耐える大型の容器=新石器の土器の甕(ジョージアではクヴェヴリの祖型にあたる大甕を地中に据える)と、(2) 果皮ごと発酵させること(醸し・マセラシオン)。ただし(2)は工夫ではなく、ブドウを丸ごと踏み潰して甕に入れれば自動的に成立する=果皮の色素が液に移り、果皮に付いた野生酵母が糖をアルコールに変える。したがって赤ワインは『発明』を要さず、土器を持つ農耕村落がブドウを大量に扱った時点で必然的に生じる。逆に果皮を除いて搾汁だけを発酵させる白ワインのほうが余分な手間を要する後発の技術である。McGovern et al. 2017 の分析では樹脂などの添加物の痕跡は検出されず、素のブドウ酒だった
- 場ゲート
- 南コーカサスの新石器の定住農耕村落(Gadachrili Gora / Shulaveris Gora=前6000年紀のシュラヴェリ・ショム文化の集落)。甕を家屋の床下に据えて仕込み・貯蔵する家内〜共同体規模の生産で、宮廷や専業者を必要としない。銅石器時代のアルメニア Areni-1 では洞窟内に圧搾槽・発酵槽・貯蔵甕が揃った専用の醸造施設が現れ、周囲に埋葬があることから儀礼・葬送と結びついた消費が推定される。下ってエジプト王朝時代には王墓の副葬品(ツタンカーメン墓の赤・白のアンフォラ)として王権の場に、ローマ期には色で格付けされる商品として市場に現れる
各地への伝来 2
各地で食べ物として定着した時期の記録です。地域によっては、それに先立つ物理的な到来(観賞用など、食用より前の前史)が含まれることがあります。
- 前6000〜前4000頃 南コーカサス 在来加工
- 前900〜前600頃 スペイン 交易路流通