食材から辿る / 旧大陸
鴨 素材 時期 B検証済
鴨が、いつ・どこで食べ物として成立し、各地へどう伝わったかをまとめています。 原産地での成立を3ゲート(食材入手・調理技術・場)で示し、その後の各地への到来を記録でたどります。
鴨(野生のマガモ Anas platyrhynchos 類)は旧大陸〜周北極域に汎在する在来の渡り水禽で、家畜化を経ずに狩猟だけで入手できる(パターンA=入手=食用)。硬い考古学的下限はオハロII(イスラエル・ガリラヤ湖/23,500〜22,500 cal BP)で、カモ科(Anatidae)を含む水禽が胸・翼など可食部位主体で出土=遅くとも約23,000年前に食用(Steiner et al. 2022)。日本列島でも縄文前〜中期の田小屋野貝塚(前4000〜前2000年)でガン・カモ類の鳥骨が出土。家禽アヒル(同じマガモ由来)の家畜化は中国南部で前210年ごろ(±441年・Zhang et al. 2018)だが、それは供給の安定化であり鴨自体の入手前提ではない。したがって下限は『これより古い可能性が開いた考古学的下限』であって発明年ではない
3ゲート
- 食材入手ゲート
- 在来。マガモ Anas platyrhynchos ほかカモ類は旧大陸・周北極域に広く自生する渡り水禽で、外来食材ゲートを持たない。家畜化不要=越冬地の湖沼・湿地・水田での網・罠・弓による狩猟で入手でき、考古学的には遅くとも約23,000年前(オハロII、カモ科を含む水禽の可食部位が出土)に食用が確認できる。日本列島では前4000〜前2000年の縄文貝塚にガン・カモ類の骨。家禽化(中国南部・前210年ごろ)は安定供給の手段で入手の前提ではなく、家禽アヒル肉は別素材として扱う
- 調理技術ゲート
- 羽毛の除去・内臓処理と火による加熱(焼く・煮る)。いずれも狩猟採集段階から在り、特別な成立下限を課さない。厚い皮下脂肪を活かす低温加熱、脂漬け保存(コンフィ)、ローマ期の囲い飼い(Columella, Res Rustica VIII.15 のネッソトロフィウム=鴨・コガモ等を囲いで飼う)などはいずれも後代の応用で、素材としての入手・食用には効かない
- 場ゲート
- venue=水辺の季節猟(越冬地の湖沼・湿地・のちの水田)/stratum=大衆(土着の狩猟。ただし近世以降は鷹場・禁猟区・狩猟免許といった地域固有の規制が上に乗る)/access=一般(水辺に住む人々が広く入手)/community=特定なし(旧大陸の水辺の狩猟民に汎存)
各地への伝来 3
各地で食べ物として定着した時期の記録です。地域によっては、それに先立つ物理的な到来(観賞用など、食用より前の前史)が含まれることがあります。
- 前21550〜前20550頃 レバント 在来
- 前11200〜前10700頃 フランス 在来
- 前4000〜前2000頃 日本 在来
鴨の到来が成立を縛った料理 1
鴨が届く前には成り立たなかった料理です。到来年が、その料理の物理的な下限になります。
- 鴨のコンフィ フランス1600年ごろ
鴨を使う料理 1
- カスレ フランス1600年ごろ