食材から辿る / 在来
マチェス(塩熟成ニシン) 素材 時期 C検証済
マチェス(塩熟成ニシン)が、いつ・どこで食べ物として成立し、各地へどう伝わったかをまとめています。 原産地での成立を3ゲート(食材入手・調理技術・場)で示し、その後の各地への到来を記録でたどります。
低地地方(ゼーラント/ホラント)で成立した軽塩蔵の若ニシン。成立=在来ニシン漁+船上 kaken(膵臓を残す酵素熟成つき軽塩蔵)が揃った14世紀末〜15世紀初頭でおよそ1400年(幅あり)。名称の文献初出は1466–67年ズトフェンの記録 medykens-/meeckenshering、以後1599年 Kiliaan『maeghdekens haerinck』(halec prima virginea, lactibus et ovis carens=白子も卵も無い処女ニシン)、1604年 maetgens haringh。通説の『1380年ベーケルスゾーン発明』は16世紀の年代記に現れる伝説で採らない。現行の『ホランセ・ニューエ』という呼称自体は1930年代の新聞初出
3ゲート
- 食材入手ゲート
- 在来ニシン(Clupea harengus)の漁獲=北海・ゼーラント沖の在来資源で低地地方では自明に入手可(既存到来行: ニシン(在来)@オランダ=1000年)。加えて樽詰め塩蔵に足る量の塩(イベリア/大西洋岸の海塩=ベイソルトの交易)。マチェスは産卵前で白子・卵が未発達(maagd=処女)かつ脂肪16%以上の若ニシンに限る等級で、漁期は5〜8月
- 調理技術ゲート
- kaken(gibbing)=漁船上で鰓と内臓の一部を除き、酵素を持つ膵臓を残したまま樽に塩と交互に詰め、酵素熟成させる軽塩蔵。これがマチェスを定義する律速の加工技術で、低地地方で船上加工として定着したのは14世紀後半。『1380年ごろヴィレム・ベーケルスゾーン(ゼーラント・ビールフリート)が発明した』という通説は16世紀の年代記に初めて現れる後付けの伝説で、同種の魚の塩蔵保存は1300年以前のスカンジナビア(スカニア漁業)に遡るため、個人発明譚としては史家に否定されている
- 場ゲート
- ニシン漁船(15世紀初頭以降はハーリングブイス=herring buss。最初の建造はホールン1415年ごろとされる)の船上が加工の場で、塩・樽(ハンザ経由の塩と樽材)と沿岸漁村・都市市場の流通が前提。大衆の日常食かつ交易商品で、階層は限定されない
各地への伝来 2
各地で食べ物として定着した時期の記録です。地域によっては、それに先立つ物理的な到来(観賞用など、食用より前の前史)が含まれることがあります。
- 1380〜1466頃 オランダ 在来加工
- 1400頃 ドイツ 交易路加工
マチェス(塩熟成ニシン)の到来が成立を縛った料理 1
マチェス(塩熟成ニシン)が届く前には成り立たなかった料理です。到来年が、その料理の物理的な下限になります。
- Matjessalat ドイツ1800年ごろ